被害を調べたのは被害者側
私が着目したのは、当初のわいせつ行為で問題が発覚した後に次々と他のわいせつ行為が出てきたことのみならず、これは学校の調査によるものではなく、被害生徒の家族が動いて調べ、これを学校に報告したのが事実なのである。
例えば、11月14日の件では、「急に抱きしめてキスをした。(1度目)その後、いろいろ話をして、途中で急にキスをした。(2度目)」となっている。
つまり、被害側が学校などの協力を得て調べたのではなく、自らが動き聞き出したり、調べたりしてわかったことを、学校に報告し、わいせつ教師に確認して認めたことが被害とされているということだ。
また、被害生徒の気持ちが不安定になったのは、わいせつ行為を受け始めてからということもわかる。ご遺族によれば、穏やかな性格であったが、声を荒げたり物を投げるということもこのころからあったそうだ。
新聞報道などを比較していくと、被害生徒がわいせつ教師をそれまで信頼していたということもわかる。信頼していたからこそ、多感な時期の悩みや将来のことを話していたのだろうが、このわいせつ教師は、そうした生徒の信頼を利用しわいせつ行為をしていたのだ。
わいせつ教師はいつも卑怯だ
様々な報告書を読み返してみたが、このわいせつ教師は、なぜこのような卑怯で悪質な行為に及んだのかという問いには、「なぜだか自分でもわからない」としか答えていない。
つまりは咄嗟にしてしまったと言いたいのだろうが、それまでしてきたわいせつ行為からすれば、狙ってやった、恋愛感情関係があったと装いたかった、歯止めがきかなくなっていたと考えるのが妥当だろう。
わいせつ教師の当初の処分は、訓告処分であったが、平成26年3月には懲戒免職が発令されている。ただし、教員免許の失効情報が官報掲載されなかったことが2020年読売新聞の報道で明らかになっているのだ。
わいせつ教師問題は萩生田文科大臣が記者会見で、二度と教壇に立ってもらいたくない旨の発言をしたり、以前、伝説の探偵で取り上げた全国学校ハラスメント被害者連絡会の署名活動などで注目され、以降40年間の記録が閲覧できるようにすることでわいせつ教師の採用に影響を持たせるような対応をすると報道されているが、未だに教員免許失効後、原則3年で再所得できる状態である。40年間閲覧できるというのも、まだ先の話であるのだ。
報道されたことで、世間では40年間閲覧はもう出来上がっているようなマインドに感じるが、そもそもこの40年間閲覧も、閲覧ができるというだけで、再所得できないわけではないし、再任用されないわけではない。
いつの間にか、官報の処分記録が40年間閲覧できるということにすり替わっただけであり、当初は「採用されることはない」から「40年間採用されない」となって、「処分履歴を40年間見ることができるようにするから、たぶん採用しないだろう」ということになっているのだ。