この時期に金正恩「総書記」就任の謎。過去の報道から見えた意図

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12日に北朝鮮の首都・平壌で開かれていた朝鮮労働党大会が閉会し、それに先立つ演説で、金正恩氏が「核戦争抑止力を強化し、最強の軍事力を育てることに全力を挙げる」と述べたことが大きな話題となっています。これまで「非核化」実現を掲げていた発言を正恩氏自ら放棄した形となったわけですが、その正恩氏がこの党大会で「総書記」に就任しました。今のタイミングで就任した意図は何なのでしょうか? メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんが、北朝鮮の「総書記」という文字を含む過去の新聞記事から、北の現状を読み解きます。

北朝鮮・金正恩氏「総書記」就任について新聞はどう報じたか?

きょうは《朝日》から。

北朝鮮の金正恩党委員長が党総書記に推戴されるという記事がありました。《朝日》の検索で「総書記」を検索すると、1年以内の紙
掲載記事で50件ヒットしています。

きょうは、ちょっとよく分からない「総書記」を探ります。

まずは《朝日》3面の記事。見出しから。

金正恩氏が「総書記」に
北朝鮮、態勢強化の狙い

北朝鮮の朝鮮労働党は、金正恩党委員長を党総書記に推戴する決定を採択。「総書記」復活は父の金正日氏以来で、祖父、金日成主席も就いたポスト。2人の権威と並ぶことで「遺訓政治」から脱却し、正恩氏が首領としての地位を掌握したことを示す狙いか。

朝鮮労働党の党大会で、金正恩氏を「総書記」に推戴する決定書が採択されたという。決定書の中では「総書記」を「全党を代表し領導する党の首班」としている。

正恩氏は37歳で、父の金正日氏が総書記となったのは55歳、祖父の金日成氏は54歳の時だった。《朝日》の記者によれば、「核ミサイル開発の進展で軍事力を確保したことを成果とし、正恩氏中心の体制を一層強化する狙いがあるようだ」という。ただ、「経済が厳しいなか、総書記就任で内部の結束を高め、危機を突破したい思惑もあるようだ」とも。

(uttiiの眼)

このところ、北朝鮮関連の情報としては、金正恩氏が公然と自らの失敗を認めるような発言をしたり、経済計画がうまくいっていないことを認めたりするなど、父や祖父の時代には考えられなかった「率直さ」が表に出ていたので、そのことと今回の「総書記」就任にどんな関係があるのか知りたかったが、記者の取材も困難なのか、記事中に納得のいく説明はなかった。そもそも、朝鮮労働党委員長が「総書記」になることが、なぜ「内部の結束を高める」ことにつながるのか、理解が困難だ。

【サーチ&リサーチ】

50件のうち、相当数が北朝鮮ではなく、中国の「総書記」についての記事。アジアの社会主義国、あるいは共産党では、党のトップを「総書記」と称することが多く、General secretaryの訳という意味では、「書記長」も「第一書記」も似たようなもの。言葉の印象としては「合議体の記録係」のような感じだが、実際は強大な権力を持つ独裁者や、少なくとも共産党内で最高の地位を示す言葉になっている。

因みに、中国の習金平氏は共産党トップの総書記だが、同時に、国家主席として国家のトップでもあり、中央軍事委員会主席でもある。

金正恩氏と北朝鮮国民にとって「総書記」は依然として金正日総書記のことであり、正恩氏は「遺訓政治」の形を脱することが、最近まで難しかったのだろう。物別れに終わったハノイの米朝首脳会談から1年たった昨年2月、米朝非核化交渉を巡って、以下のような記事が掲載されている。

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