“弾劾”トランプの大罪。5年の長きにわたり育てた「憎悪」が生む暴力

 

日本で学生運動が盛んな時の言葉はやはり暴力的で結果的に衝突に結びついた。私の学生時代には学生運動は風前の灯だったが、それでもキャンパスの目抜き通りには残党の方々が大きなべニア板に「糾弾!粉砕!」と暴力的な言葉を並べていた。ヘルメット姿の学生が演説もしていたが、それはやはり暴力と隣り合わせの構図だったから、当時の「平和な」時代にはそぐわなかった。結果的に彼らは無視される形となった。

言葉は暴力のパートナーにもなるし、平和のパートナーともなる。今回のトランプ氏の事件で自覚したいのは、彼の威勢のよい言葉に、倫理性やケア性の視点から考え直し、その暴力に気付くことである。言葉の暴力は、それに賛同する人のフィジカルな暴力の素地となる。ネガティブなイメージを記憶化し、心の中で憎悪を宿し続ける。

言葉でつながる私たちは言葉で傷つき、言葉で救われる一方で、暴力は暴力からは始まらず、暴力も言葉で始まり、その言葉が集約された情報で怒りはまた暴力に代わっていく。今回のトランプ支持者による暴力はトランプ大統領の言葉が作ったものであり、彼の言葉がこれまで宿していた憎悪を掻き立てたのである。これは、やはり暴力であると思う。

言葉が暴力を生み、それは人類への脅威であることは確認したい。丁寧に話す。嘘をつかない。そんなコミュニケーションの倫理観を確認しながら、正しくケアなる言葉を尽くして未曽有のコロナ禍という危機を乗り越えていきたいと思う。

image by:Evan El-Amin / Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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