iPhone SE(第2世代)を実質無料で販売するプランを掲げていたKDDI関係のジュピターテレコム子会社(ジェイコム地域会社)が、端末割引や期間拘束違約金の規制対象に追加されました。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、規制逃れの構図を解説。確認ミスで済ますKDDI及びジェイコム側の問題は当然ながら、競合他社からの情報提供でしか違反を把握できない総務省にも問題があると指摘。さらには、メインキャリアの値下げが出揃ったことで、苦境に立つ格安スマホ事業者向けの施策の必要性を訴えています。
総務省がJ:COM MOBILEを規制対象に追加と発表――iPhone SE実質無料が他社から突っ込まれたか
総務省は「電気通信事業法第27条の3等のルール」の対象として、ジュピターテレコム子会社(ジェイコム地域会社)などKDDIの関係会社12社と、NTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)を追加する方針を発表した。
「電気通信事業法第27条の3等」ではMNOやMNOの特定関係法人、MVNOでもシェア0.7%(100万契約以上)を持つ企業が対象となる。こうした企業は、端末割引上限2万円や、期間拘束契約の違約金上限1000円などが課せられる。
ジェイコム地域会社11社と京セラコミュニケーションシステム(KCCS)はKDDIの特定関係法人であったが、KDDI側のミスで報告されておらず、規制対象になっていなかったとされる。実際に、規制対象になっていなかったことで生まれたのが、J:COM MOBILEによるiPhone SE(第2世代)を実質、無料で販売するプランだ。
発表当時から「なぜ実質、無料の割引が適用されるのか」という疑問が記者から湧いていたが、J:COM MOBILEでは「ジェイコム地域会社は規制対象になっていない」という回答であった。「だったら、他社も販売会社を地域ごとに分散させて、同様の割引施策できるのではないか」というツッコミもあったが、なんのことはない「KDDI社内で解釈の誤りがあった」という理由であった。
ただ、そもそもKDDIだけの解釈の問題ではなく、当事者であるジュピターテレコム側も確認すべきことだし、今回、対象となったジェイコム地域会社も自ら確認すべき事案ではないのか。これだけ総務省のよる割引規制が強くなる中、iPhone SEを実質扱うのはそれだけ世間的にもインパクトがあることだけに、そのタイミングでもう一度、確認作業があってもいいはずだ。
また、総務省も、もうちょっと早い段階でツッコミをいれてもいいのではないか。この手の話は、おそらく、別のキャリアが総務省に駆け込んで、問題視されるというパターンがほとんどだ。iPhone SEを実質無料で販売しているのを面白くないと感じていた他社に突っ込まれたのかも知れない。今回の件を受けて、1月23日~2月22日まで意見募集が行われ、その後、正式に規制対象として追加されるようだ。
ただ、3キャリアで廉価プランが登場することで、この法律自体の見直しも必要なのではないか。おそらく、KDDIとしてもpovoを始めることで、J:COM MOBILEの立ち位置を変えてくるのは間違いない。
また、この法律ではIIJとオプテージが規制対象となっている。彼らを対象から外さないことには廉価プランにも太刀打ちできず、さらにこうした足かせをはめられ続けることになるため、相当、競争力を失うことになる。MVNOを生かすためにも、特定法人ではないMVNOは規制から外すといった検討が必要だろう。
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