人工甘味料トレハロースで「感染症急増」は本当か?医学博士が再び検証

 

【英雑誌Natureと当時の見解】

まずは、3年前に書いた記事がこちらです。

人工甘味料トレハロースで感染症が急増?医学博士が真偽を解説(MAG2NEWS)

研究内容は、Cディフの毒性の高い2株に着目しました。その中での主張は、この2株は必要な栄養素として低濃度のトレハロースを代謝する4つの遺伝子を獲得し、毒性を高めたというものでした。さらに、マウスを用いた病原性の検証を行いました。マウスの餌にトレハロースを加えると、上記2株のCディフの病原性が高まり、マウスの生存率が低下したという内容でした。さらに、2000年にアメリカ食品医薬局(FDA)がトレハロースを食品添加物として認可した背景があり、こうした背景がCディフの感染症のアウトブレイクに関与しているのではないか、という結論でした。

この論文に対し、僕個人は今後注目して追加研究を行うべきだという認識を示しました。記事にも書きましたが、研究の真偽は論文の紙面からはなかなか判断が難しいからです。だからこそ、追試などが行われ再現性も含めて再検討されるべきなのです。そんな状況をまとめて「こりゃ放っておけない」というのが僕のこの研究分野に対する印象でした。

さらに、記事内でも「トレハロースは悪だ、製造法を開発した日本の会社は罪だ」と短絡的に思わないようにして下さい、という旨も書きました。ところが、『Nature』のような論文に食品添加物が危険だというような内容が掲載されると、その内容だけが独り歩きしてしまう傾向があります。

さらに、『Nature』の論文ではあくまでもマウスでの実験なので、臨床の場での検証もすべきだという見解を書きました。しかし、後に反論をする論文が現れても「危ない」という『Nature』の記事ほどセンセーショナルではないので、古い情報だけが定着するというのが残念ながら世の中の傾向です。僕自身、意図に反してこの傾向に貢献してしまった可能性があったら不本意に感じるので、新情報をお伝えすることにしたのです。

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