【Natureに反論する研究】
さて、前置きが長くなりましたが、その後臨床的な検証が行われた論文が発表されました。別々の研究チームから2報の論文が発表されました。その一つ、オックスフォード大学のグループが『EBioMedicine』に発表した論文を『Nature』の論文と対比させてまとめてみたいと思います。林原のウェブサイトにもわかりやすく対比されているので、そちらもご覧ください。
● 雑誌EBioMedicineに掲載されたトレハロースの安全性を裏付ける論文について
検証1:遺伝子変異はトレハロースによるものか?
Nature:トレハロースがCディフの遺伝子変異を招いた可能性がある。
EBioMed:ゲノム解析をしたら、数千年前から強毒菌以外のCディフにも広く存在する遺伝子変異である。
検証2:4つのトレハロース代謝遺伝子について
Nature:Cディフの強毒菌がもつ4つのトレハロース代謝遺伝子は感染の流行と死亡率に関連している可能性がある。
EBioMed:4つの遺伝子は強毒菌以外にも広く存在し、200の症例では患者の死亡率とも関連性はない。
検証3:各国によるトレハロースの輸入と感染症の関連について
Nature:トレハロースの輸入と同じくしてCディフの強毒菌の流行が始まったことに関連性があると示唆。
EBioMed:欧米でCディフが流行した2000~2006年のトレハロース輸入量は実は極めて少なく、むしろ輸入が増えたのは2008年以降だったので、関連性はないと結論。
検証4:トレハロースを接種すると、ヒトの腸内のCディフ強毒菌に影響するのか?
Nature:マウスでの実験では影響が確認されたが、ヒトでのデータは無し。
EBioMed:ヒトの糞便を用いた試験管内試験において、トレハロース添加によってCディフ強毒菌の特異的増殖はなく、毒素の増加もなかった。