「あるべき姿」を共有しない限り、無意味な振り返り報告は改善されない

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自身がコンサルとして支援しているお店には、必ず「一日の振り返り」をしてもらうことをお願いしているという飲食店コンサルタントの中西敏弘さん。しかし、「まったく意味のない振り返り」を出している企業も多いそうです。中西さんは自身のメルマガ『飲食店経営塾』の中で、「意味のない振り返り報告」をしてしまう原因とその改善策について、事例をあげながらわかりやすく解説しています。

全くもって意味のない“振り返り”(報告)を辞めさせる方法はこれ!

僕のご支援先では、店舗で、日々「目標設定」と「フィードバック」をしてもらっています。

店長がすべてのスタッフ(社員含む)に対して、その日の営業状況、各人のスキルに応じて、「今日の営業中の注意点」「強化ポイント」を明確にして仕事に取り組んでもらい、営業終了後、各自にフィードバックする、という流れで「目標設定」と共に、各自に対してのフィードバックをし、個人の成長を図るようにしてもらっています。

同時に、1日の「店舗の振り返り(反省)」も行ってもらっています。これは、毎月、行動目標を立ててもらい、それに対して、今日の営業はどこまで改善できたか、また、何が課題であったのかを、「目標設定」と同じシートにやってもらっています。

これにより、「ただ、なんとく営業する」のではなく、各人が課題を持って仕事に取り組んでもらうことによって、顧客満足度を高めるとともに、各人に達成感を感じてもらうことで、スタッフのモチベーションアップに繋げるという、狙いもあります。

先日、あるご支援先の「目標設定シート」を確認していると、うれしいことがありました。それは、数ヶ月前よりも、確実に、目標設定とフィードバックの「質」が向上したからです。

数か月前は、とりあえず、目標をもって仕事に取り組むことを重視していたこともあり、「やること」(目標設定とフィードバック)がゴールになっていた感がありました。

それとともに、もうひとつ大きな問題だったのが、店の中に「型」(あるべき姿)というのがなく、目標も不明瞭で、また、振り返りも不明瞭という状態だったということです。

これは、どこの会社でもありがちなのですが、「型」、「あるべき姿」がないと目標設定も振り返りも、実行するのが非常に難しいのです。

例えば、目標を「笑顔でがんばりましょう!」と、スタッフに課したとします。

ただ、笑顔の「あるべき姿」が皆で共有されていないと、やる方もフィードバックする方も、なんとなく「笑顔で仕事できていたな」と感じたら、フィードバックは、「すごくよかった!」となってしまいます。

つまり、会社が求めている笑顔になっていなくても、「すごくよかった」と評価してしまい、目標設定もフィードバックも意味のないものになり、誰も笑顔の状態がレベルアップしないのです。

そこで、「笑顔の状態」をある程度きめ細かく決め、具体的にいうと、笑顔のあるべき状態とは、

  • どんなとき(どんなに忙しくても)笑顔である!
  • お客様から話しかけれらやすい笑顔
  • お客様の方も思わず笑顔になるような笑顔
  • 声も笑顔

などのように、最高の状態(あるべき姿)を決めるのです。

すると、やる側もフィードバックする側も、目指す姿が明確になる事で、仕事中に意識すべきこと、そして、フィードバックする側も、どこを仕事中意識して見ておけばいいのかが明確になり、フィードバックもやりやすくなり、どんどん笑顔のレベルが上がっていくようになります。

同じように、店内のオペレーションも、最初は、小学校のサッカーのように皆が好き勝手に動くようなオペレーションになっていると、目標もフィードバックもレベルの低いものになってしまいますが、各ポジションを決め、ポジションごとの動き、各ポジションの連携方法などのコツ・ポイントを明確にし、オペレーションのあるべき姿を作ると、目指すものが「高く」なることで、目標設定もフィードバックも質が高くなってくるのです。

このご支援先では、ここ数カ月間、接客のゴール(サービスストーリーのゴールの共有)、オペレーションのゴール(各ポジションの役割と仕事を明確にし、各ポジションの仕事のコツ・ポイントも明確化)等を確立したことで、社員スタッフの視点がすごく向上したのです。

そのため、目標設定もフィードバックも、より具体的に指摘できるようになったのです。

一番、質が上がっていたのは、1日の「店舗の振り返り」です。

以前は、「今日は忙しかったです。ですが、すごく元気よくできました」と、ほとんど意味のない振り返りになっていましたが、今は、「今日は、出迎え時のフォローがしっかりできていました」「デシャップとホールの声の連携が良くない時がありました」「もう少し、お客様に呼ばれる回数を減らしたいです」などと、格段にレベルアップしたのです。

これは、ここ数カ月間、徹底して、店舗の様々な「あるべき姿」を社員スタッフと共有し、社員スタッフの「見る視点」と「あるべき姿」が、少しずつ浸透してきたことにより、目標設定もフィードバックもより具体的に行うことができるようになったのです。

もし、店舗からの振り返りが毎日、「今日は忙しかったです」「今日はうまくまわりました」「今日は常連さんの〇〇さんが来ました!」と、意味のない振り返りばかりで悩んでいる方は、ぜひ、皆で、接客、オペレーション、商品作り(キッチン業務)の「型」「あるべき姿」を作ってみてください。

数か月後には、意味のない振り返りが確実に減ります!

image by: Shutterstock.com

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【著者】 中西敏弘 【発行周期】 毎週2回

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