習近平の勘違い。「米は中国と戦わず台湾から逃げる」という甘すぎる思い上がり

 

「アメリカは最終的に台湾を諦める」という習近平の読み

次にアジアですが、間違いなく東・南シナ海における対中包囲網と、台湾海峡を舞台に緊張が高まる米中の軍事的な対峙は、2020年代は見逃せない事態だと考えます。

自由主義陣営の対中包囲網の強化については、トランプ政権時代から、日本、インド、オーストラリアを巻き込んだ形で形成されてきましたが、バイデン政権になり、明確にドイツ、フランス、英国、そしてNZも含む大きな包囲網になろうとしています。

その中でも面白いのがフランスの動きです。真偽のほどはわかりませんが、フランスの国防大臣曰く、2月にフランス海軍の攻撃型原子力潜水艦エムロードが南シナ海を潜航し、米国のFONOP(公海航行自由の原則維持のための作戦)への支持を示しました。

これは同時に、フランスが南太平洋に持つDepartment d’Autres mers(在外県)とTerritoires d’Autres Mers(海外領)に対して、中国の影響力が伸長してきていることへの警戒と、対抗の覚悟を示したものと思われます。特に2020年に話題になったニューカレドニアの独立問題では、独立派の背後には中国が存在し、独立の暁にはフルでサポートするという密約があったらしいことが最近分かりました。

フランス政府は、それを自国の統治権に対する中国からの挑戦と受け取ったとのことで、今回の示威行為に至りました。

しかし、中国は無反応です。潜水艦の探知に関わる内容は、軍事機密として扱われるため、中国が実際にフランスの潜水艦の潜航を探知していたか否かについては触れませんし、同時に、中国が誇る潜水艦戦力は、フランスのそれに比べると強力無比の規模と威力ですから、あえて無視したとも言えるでしょう。

ドイツも英国も対中包囲網に参加していますが、ドイツは、ドイツのビジネス利権を失うようなことは国内政治的にタブーとされているために、実際にはドイツ軍の参加は有名無実化されますし、英国の参加は、EUから離脱したことで心情的な威力は薄まったと見られているため、包囲網の勢力拡大に寄与できるか否かは不透明です。

今後のアジアの行く末を占うのは、間違いなく、このメルマガでも触れている台湾海峡問題、特に米中間の覚悟のせめぎあいです。

バイデン政権に移行することで、アメリカの台湾への肩入れは少なくなるとの見方もありましたが、その期待を覆したのは1月20日の大統領就任式に台湾政府の代表が招待されたことでしょう。

その後も、中国に関わる話題が出るごとに、バイデン大統領はもちろん、ブリンケン国務長官もオースティン国防長官も、台湾を中国の野心から防衛する覚悟を繰り返しています。

台湾海峡において米中海軍双方が示威行為を行って、明確な覚悟と意思を表明しており、一触即発の危機ともいわれていますが、実際にはどうなのでしょうか?

まず、中国の習近平政権ですが、台湾を巡る衝突の可能性を認識はしていますが、「中国がはっきりとした意思を示し、行動を取ることにより、アメリカは有事の際、最終的には台湾を諦める」と予測しているようです。

その背後には、急速に強力化した中国の戦力の存在もありますが、「アメリカは、第2次世界大戦後、戦争に負け続け、これ以上の敗北を喫するわけにはいかない」との見解も影響しているようです。

また最近、情報が入りましたが、米国防総省(ペンタゴン)の分析によると、2027年をめどに、PLA(人民解放軍)を米軍に匹敵する世界クラスの近代的な戦争部隊に増強する計画があり、中国政府は着々と作業を進めているようで、もしかしたら、その目標年度も早まるのではないかとの分析もあります。

中国の自信の源はここにあるのかもしれません。

また、PLAの軍事戦略として【接近阻止(A2)と領域拒否(AD)】が示され、PLAとしては、米国との台湾有事の際には、兵器の大量使用によって台湾からアメリカを締め出す作戦が綿密に練られているようです。

最近、米中問題について発言する際、特に国内向けの談話では、台湾有事と米国との戦いに備えよ!との内容が繰り返されていることからも、“勝てる”と踏んでいるのかもしれません。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 習近平の勘違い。「米は中国と戦わず台湾から逃げる」という甘すぎる思い上がり
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け