習近平の勘違い。「米は中国と戦わず台湾から逃げる」という甘すぎる思い上がり

shutterstock_1638514489
 

もはや覇権奪取の野望も、台湾併合の野心も隠すことすらしなくなった中国。民主主義陣営の盟主・アメリカはこの先、彼らとどう対峙してゆくのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では著者の島田久仁彦さんが、世界各地に波及する米中対立の影響を丹念に解説。さらに習近平国家主席が2028年までに確実に台湾を狙いに来るとし、そう判断する理由を記しています。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

不変の米中間対立の温度―緊張高まるアジアと中東地域の行く末

3月に予定されている全人代を前に、外交上は静かに思える中国政府。しかし、すでに超大国である中国を、国際情勢は放っておいてはくれないようです。第2次世界大戦後、その状況を楽しみつつ、重責を担ってきたアメリカ政府の“苦労”を理解できているかもしれません。

皮肉なことに、その米中の対立は、世界にデリケートな安定と緊張をもたらしています。アメリカの政権が、緊張を高めたトランプ政権から、国際協調への復帰を掲げて大統領になったバイデン大統領の政権に変わっても、それは変わっていません。

バイデン政権が打ち出す人権問題というカードは、中国を苛立たせるのみならず、トランプ政権が蜜月とも言われた関係を築いた中東諸国を恐れさせています。そしてそれがデリケートな安定と緊張のバランスを変えようとしています。

対米そして対中関係が恐らく変化しないのが、イランです。イラン政府としては、散々イランを敵視したトランプ氏が政権を去り、国際協調への復帰の看板を掲げるバイデン政権が誕生したことで、アメリカによる対イラン制裁の解除に向けた動きが見られるものと期待しました。

しかし、イラン政府曰く、それは期待外れで失望しているとのこと。

バイデン政権は、イラン核合意への復帰の可能性に言及しつつも、イランの核開発のレベル、特にウラン濃縮のレベルを2016年に合意した際のレベルに戻す(低下)までは、合意への復帰もイラン政府との対話も行わない旨、明言してきました。それは、大統領就任後も同じです。

イランのロウハニ大統領にとっては、「アメリカが経済制裁を解除する、もしくは、少なくとも段階的に緩和する動きを見せるまでは、核開発の停止は行わず、またウラン濃縮レベルも引き上げる」と明言し、“まずはアメリカが誠意を見せよ”というのがポジションです。

穏健派と言われるロウハニ大統領をして、このような対立軸を強調するのは、今年、自らの任期満了に伴って行われる大統領選挙に向けて、対米強硬派の支持率が上がっており、それに並行して革命防衛隊への支持も増えているという、国内状況への配慮がにじみ出ています。

イランが国際社会から再び孤立し、国民に苦境を強いる強硬派にイランがコントロールされて欲しくないというのが、ロウハニ大統領の思いでしょう。

残念ながら、そのような“配慮”もワシントンDCには届かず、イランはバイデン政権にプレッシャーをかけるために、1月から受け入れていたIAEAの抜き打ち査察の停止を通告することを決め、査察官による国内核関連施設への立ち入りを禁止ました。

これでまた、ウラン濃縮が高まっているとされるイランの核関連の動きにベールがかかることになりました。

イランは正式に否定はしていますが、今回の措置により、1年と想定されていた【ブレイクアウトタイム】(イランが核武装を決意してから、実際に核兵器一発分の高濃縮ウランを手にするまでの時間)が大幅に短縮される恐れがあると懸念されています。

言い換えると、有事の際、国際社会、特に核合意の当事者による外交的な問題解決のための時間が奪われることを意味します。

とはいえ、当事者であるロシアと中国は、同時にイランの核開発の後ろ盾という見方も強く、今回の措置を受け、よりイランへの肩入れを強め、アメリカとの対立関係を高めるものと考えています。

ここにも、まだ顕在化していませんが、米(欧)中対立の構造が見えます。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 習近平の勘違い。「米は中国と戦わず台湾から逃げる」という甘すぎる思い上がり
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け