世界で強まる日本への不信感。ミャンマー国民弾圧にダンマリの薄情

shutterstock_1928293964
 

軍事クーデターへのデモ隊に対する治安部隊の発砲等により、50名以上が犠牲となっているミャンマー。混乱は深まる一方ですが、ミャンマー国民の人権を守るため、我々はどのようなアクションを起こすべきなのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では著者の島田久仁彦さんが、ミャンマー国軍の人民弾圧開始により流れが変わった各国政府や企業の対応と、欧米諸国から日本企業が「嫌味」を言われている理由を紹介。さらにミャンマーの隣国である中国の動向についても詳細に分析しています。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

二分化されたミャンマー:最後の成長フロンティアの迷走と混乱

2月1日の国軍によるクーデター以降、ミャンマー情勢の混乱が止まりません。再三のデモ隊への圧力や行動の制限にもかかわらず、収まらない民主化運動のデモの拡大。国軍への反発から、ゼネストにでる公務員や工業団地の職員たち…。

完全にフライン総司令官率いる国軍と軍系の政府は、袋小路に陥りました。

NLD派については、デモの力に後押しされて、暫定政府の樹立へと突き進んでいます。そこにアウンサンスーチー女史の名前は現時点ではありませんが、国軍によるクーデターの正統性を真っ向から否定し、民主化運動の継続をアピールしている国民の大多数の支持に支えられたものと思われます。

それに過剰反応したのが、フライン総司令官率いる国軍です。2月28日の大規模デモへの発砲に始まり、3月4日までに少なくとも50名の死者が出ており、今後、確認が進めばその数は増えるものと思います。

これは、これまで国軍側についていた、警察や消防といった治安当局の離反も招いているという情報を得ました。まさに混乱は深まる一方です。

これにより、国際的な批判が高まっています。欧米諸国からの非難はもちろんですが、一時は黒幕とされた中国、そして内政不干渉の原則から静観していたASEAN各国まで、フライン総司令官と国軍によって行われた武力行使への非難が進んでいます。

国連事務総長(グティエレス氏)は「暴力的な弾圧を強く非難」する声明を出しました。そして、今月は米国が安全保障理事会議長国であることからも、立場上、公式なコメントではありませんが、対ミャンマー制裁が安保理での議論のテーブルに乗せられるとの見通しを語っています。

実際には中ロの姿勢次第といえますが、何らかの非難声明が出る可能性は高いと私は考えています。

次に、米国です。ホワイトハウスの国家安全保障担当大統領補佐官であるサリバン氏が「追加制裁を具体的に準備している」旨のコメントをし、アメリカとして何らかの追加措置を取ることをにおわせています。

これには、先ほど述べたように、今月の国連安保理議長という立場を活かして議論を国連の場にもっていくというルートと、すでに米国が課している軍幹部への制裁措置の強化というルートの2通り考えられます。

前者については、現在、任免問題で話題になっているミャンマーの国連大使が、NLD側の立場を取り、公然と国軍によるクーデターとその後の混乱について非難していることから、安保理決議の重要な引き金となる【当事国の同意・依頼】という条件は満たしそうな感じです。

もちろん、本国の軍事政権による政府はそれを認めないでしょうが、まだ解任されていないため、安保理に上程される段階では、もしかしたら、当事国の賛成という事態になるかもしれません。

後者の場合、バイデン政権の懸念は、国軍をあまり刺激しすぎると、暴行に出る可能性があることと、中国への接近がさらに進むことですが、人権尊重という原理原則を前面に出す外交方針と、ASEAN諸国からの信頼という観点からも、緩い内容の制裁では済ませることが出来ないのが実情です。もしかしたら、バイデン政権の対中・アジア外交の方向性と真価を決定づける案件になるかもしれません。

EUについては、ミシェル欧州大統領、欧州委員会のフォンデライエン委員長に加え、メルケル独首相、マクロン仏大統領なども挙って、ミャンマー国軍によるデモ隊への武力行使を非難し、「これらは国際法を露骨に無視しており、EUとして看過できるものではない」との共同コメントを出して、フライン総司令官たちに自制を促すとともに、米国や日本と共に、対ミャンマー制裁の協議に入ったとの情報もあります。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 世界で強まる日本への不信感。ミャンマー国民弾圧にダンマリの薄情
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け