世界で強まる日本への不信感。ミャンマー国民弾圧にダンマリの薄情

 

習近平国家主席の夢:“大中華帝国の再興”は実現するか─狭まる対中包囲網と中国の覚悟

世界がまだコロナの影響にあえぐ中、中国・習近平国家主席の野望は止まることを知りません。

国際社会から非難の的になる新疆ウイグル地区では“再教育”という名のもとに、地域と住民の権利を蹂躙していますが、あくまでも“国内の問題”と片付けてしまい、意にも介さない姿勢を保ちます。

昨年、欧州各国の目を覚まさせたと言われる香港国家安全維持法の施行を強行し、迅速に香港住民、特に民主化運動を進めるメディアや若者たちを収監して、近く行われる予定の香港議会選挙に対するルールまで変えようとしています。

香港が築いてきた国際的な地位は地に落ちたといえますが、それでも中国政府は香港の“中国化”を進めています。

そして、その目は今、チベットに向いています。チベットも、予てより、ダライ・ラマの政治的な活動を嫌い、中国政府が支配を拡大し、国際社会からの非難を集めているところですが、そのチベットの開発のため、数兆円規模のインフラ事業を進める方針が明らかにされました。

今、40時間ほどかけているチベットまでの道を、十数時間に縮めるための高速鉄道や高速道路の建設が行われるようです。

そして、習近平国家主席の夢である【大中華帝国の大復興】のlast mile/Last pieceに位置づけられた台湾併合への決意は、より顕在化しています。

恐らく、今日、開幕する全人代でもその決意に触れられることと思います。

このように、欧米や国際社会からの非難に対する対抗姿勢を変えることはなく、逆に強硬姿勢を強めているように思います。

そして、各国からの対中経済依存度の高まりをテコに、非難に対する報復措置を発動しています。

現在は、オーストラリアからの輸入をことごとくブロックしています。海産物、オオムギ、ワイン、石炭、砂糖、木材などがその対象となっています。

発動直後は、モリソン政権も焦った模様ですが、中国にとっての戦略物資となっている鉄鉱石は、オーストラリアに依存しているという実態に加え、国内企業の業績が良好であるという事態が追い風になり、オーストラリア政府としては、中長期的な懸念は抱きつつも、中国が願っていたほどの影響は出ていない模様です。

日本については、かつて、2012年だったでしょうか。レアメタルの対日輸出が止められるという事態での“いじめ”にあっていますが、今後はどうでしょうか?

ところで、「日中関係はこれまでになく良好」との評価をよく聞きますが、どこまで本気でそう感じているでしょうか?

尖閣諸島問題で真っ向から対立し、日々軍事的な圧力と脅威を与えてくる相手が、本当に友好国なのだろうかと、ちょっと感じてしまったりします…。

欧州各国は、大きな収入源としての対中輸出と、多くの戦略物資・資源の対中依存度、そしてアメリカへの対抗心もあり、中国市場へのアクセス拡大を至上命題にしているようですが、見事にこれを人質に取られる恐れが顕在化しています。

一応、メルケル首相の置き土産のように、昨年末、中・欧間で経済と貿易の協定が出来ていますが、まさか本当に中国が遵守するとはだれも考えていないと思います。

つまり、中国は欧州各国が世界に誇っている脱炭素をはじめとする技術の首根っこをしっかりと締め上げる準備ができています。

それは、これまで一帯一路政策の名の下、中国がアジア、中南米、アフリカで進めてきた“植民地政策”に類似してきます。

すでにこれらの国々(途上国)は、中国からの支援を受ける見返りとして、【中国の利益を常に考慮し、そして国際社会において親中であり続けなくてはいけない】という、外交・安全保障・経済上の負のスパイラルに組み込まれ、完全に支配されています。

今、メディアでは対中包囲網の強化というコンセプトが躍っていますが、それが本当に効力を発揮し、中国に圧力をかけることが出来るとしたら、それは中国離れを各国が真剣に模索し、各国共同でその動きを、相互協力の深化の下、進めることができるかによるでしょう。

そしてそのために、先進国と言われる欧米と日本、そしてオーストラリアがどこまで、中国経済圏に陥った途上国の面倒を見ることが出来るかにもかかっています。

その覚悟やいかに!?

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