その看護師さんは素敵な方でね、僕の様子にハッと気づいてすぐに言ってくれたんです。
「腰塚さんごめんね。私、腰塚さんの気持ちを何も考えずに、ただ自分の思ったことを言ってたよね。でも腰塚さんには本当に少しでもよくなってもらいたいと思っているから……、なんでもいいから言ってほしいです。お願いだから何かさせてください」
看護師さん、泣きながらそう言ってくれたんです。彼女が去った後、涙がブワッと溢れてきました。あぁ、この人俺の気持ちを分かろうとしてくれてる。この人にだったら俺、「助けて」って言えるかもしれないって思えたんです。
それまで僕は周りからずっと「頑張れ」って励まされていました。僕のことを思って言ってくれているのが分かるから決して言えなかったけど、心の中は張り裂けそうでした。
俺、もう十分頑張っているんだよ……、これ以上頑張れないんだよって……。だから救われたんです。あの時以来、凄く思うんです。人の放つ一言が、人生をどうにでも変えてしまうんだなって。だから自分は言葉を丁寧に使おう。言葉をちゃんと選んで、丁寧に使おうって。
泣くだけ泣いた次の朝、目が覚めるとベッドサイドに飾られていたお見舞いの花がふっと目に入りました。その時思ったんです。「せめて花みたいに生きることはできないかな」って。
手足は動かないけど、顔は動きます。だったらできるだけ笑顔でいよう。口も動くんだから、できる限り「ありがとう」って言おう。心も使えるんだから、周りの人がきょう一日元気に、笑顔で過ごせますようにと願おうって。
そう決意したら、いろんなものがどんどん変わっていったんです。ドクターとも、看護師さんとも、リハビリの先生とも、凄く仲良くなって、毎日が楽しくって。首の神経が全て切れていなかったのも幸いして、3週間後には奇跡的に車椅子に移ることができたんです。
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