習近平の一人勝ち状態か。たった10年で全世界を覆った中国の紅い影

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今年で東日本大震災、そして福島第一原発事故から10年が経過した日本。その間の被災地復興に対する国民の評価はほぼ二分され、社会の格差も拡大する一方ですが、世界の多くの地域でも厳しい状況が続いていたようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では著者の島田久仁彦さんが、この10年の国際情勢を振り返りつつ各国の苦しい現状を明らかにした上で、どの地域にも中国の影響が及んでいる事実を指摘。さらに、混乱を極める国際社会において、日本に求められる役割を考察しています。

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10年間の国際情勢を振り返る。米中対立─アメリカの衰退と中国の躍進

2008年に世界を襲ったリーマンショックへの対応で圧倒的なリーダーシップを発揮して以来、国際的なプレゼンスが衰退の一途を辿るアメリカ。

一方、この10年の間に経済力・軍事力で、アメリカと肩を並べるレベルまで一気に成長し、世界の新しいスーパーパワーとして躍進した中国。

それでも、現時点ではまだアメリカが世界最強の国であることには変わりはなく、常にその一挙手一投足に注目が集まりますが、「何にでも頭を突っ込み、口を出す」といった姿勢はこの10年の間にあまり顕著ではなくなりました。

トランプ前大統領の登場により、アメリカは「アメリカ第一」を打ち出し、最強の軍隊と最大の経済が持つ絶対的な強みを保持しつつも、明確に国際情勢における絶対的なリーダーという地位から降りました。

この10年は、アメリカの動きと連動してみると、国際協調の度合いがピークに達し、その後、一気に衰退に向かった時期であったと考えます。

そして、今年からバイデン政権に移行しましたが、ペンタゴン(国防総省)の最新の分析では、2028年までに、早ければ2026年までに、軍備と軍事力という面で、アメリカは中国に第1位の座を明け渡すことになるだろうとのことです。もちろん、これには“このままの状態ならば”というBig Ifはつきますが。

経済力でも同様の分析があり、2028年にはGDP換算で中国がアメリカを抜き、第1位になるようです。

その2028年になったとき、どのような世界になっているのかは予想が難しいですが、大きな転機を迎えることは間違いないでしょう。

それを理解しているのか、米国政府は、ホワイトハウスも国務省も、そして国防総省も、挙って中国を「米国の戦略上の競争相手(敵)」と認識して対策を練っています。

トランプ政権時の米中関係の悪化ばかりが注目されがちですが、実際にはオバマ政権でスタートし、トランプ政権を経て、バイデン政権でさらに対中包囲網が強化されていくというのが適切な見方かと考えます。

一方の中国はどうでしょうか?

米国を意識し続け、「いつかは米国に追いつき追い越せ!」という考えの下、成長を遂げてきました。最近の習近平国家主席賛美を受けて「習近平体制は中国を成長させ、そしてアメリカに肩を並べるまでにした」という論調をよく見かけますが、それをcompleteするために、習近平国家主席は、来年の全人代で第3期目の統治に入るものと思われます。

中国は、この10年、一貫して「ものづくり・資源国家」から「ハイテク産業・戦略物資供給国」へと変遷してきました。その過程で、欧米、特に欧州各国の経済的な対中依存体制を固定化し、「中国経済とのかかわりなしには生存できない欧州」という現実を作りました。これは、昨年夏以降、強まる対中包囲網の下でも、実際には変わらない状況と言えます。

そして、途上国の“雄”として、一帯一路政策を通じ、アジア全域を自らのコントロール下に置き、ついには「中国(習近平国家主席)はこのように感じて動くに違いない」という忖度状況まで作り上げたといえます。

まさしく、習近平国家主席が夢見る大中華帝国の再興のイメージがここにあります。

以前、習近平国家主席に近しい方たちと意見交換する機会がありましたが、その際に習氏の行動の下にある思想には、「これまで欧米のいいようにされてきたアジアを、アジア人の手に取り戻す」というOne Asia構想があるのだと聞かされました。

そのOne Asia構想を成立させるために、習近平体制が必要とするのが、台湾を併合することによって完成するOne China構想です。

昨年、国際的な約束を反故にし、香港国家安全維持法の施行をもって、香港を予定よりも30年弱早くOne Chinaブロックに組み入れ、ここまでは着実にOne Chinaへ向けて邁進しているといえます。

また中国の一帯一路政策は、アフリカ大陸、中東にも伸び、強度こそ劣りますが、中南米諸国、そして南欧・中東欧にも及んでいます。

強大な経済力と軍事力に支えられ、世界が好むか好まざるかは別として、中国は着実に世界大国への道を進んでおり、かつてのシルクロードが再現されようとしているとも言えるでしょう。

これまでの10年間で中国の躍進が鮮明になるにつれ、米中対立も、そして中国への警戒心も強まってきました。中国の言動を見ていると、その強さをアピールするかのように、そして国内外に対してその覚悟を見せるかのように、強硬化の一途を辿り、それがまた周辺諸国はもちろん、国際社会への脅威さえ作り出しています。

米中という2つの覇権国のバランスが変わり、地政学的なバランスも変えてきたのが、この10年の姿です。

これからの10年の間に、米中が直接的に戦火を交える事態になるか否か。

それにアジア太平洋地域、および国際情勢の行方がかかっていると考えます。

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