習近平の一人勝ち状態か。たった10年で全世界を覆った中国の紅い影

 

躍動する“熱い”アフリカ大陸-ICTが変えた“お金”と“つながり”&デリケートなバランスで持ちこたえる脆弱な平和と安定

東南アジア諸国と並び、この10年で豹変したのがアフリカ諸国です。深刻な貧困、インフラ不足、疫病のパンデミック、衛生管理の低さなどが懸念されるというイメージがついていたアフリカも、この10年で気が付けば、国民の多くが携帯電話・スマホを片手に仕事を行い、所得レベルの向上に伴う教育レベルの向上と衛生環境の改善などを受け、成長のセンターへと変貌を遂げてきました。

主要インフラの一つとされる通信インフラは、固定電話と電話・データ線という段階を飛び越し(Leap Frogging)、一気にモバイル端末と高速インターネットを通じたコミュニケーション手段へと移行しました。

銀行口座の保有率が低く、金銭の収受が困難とされてきた国々でも、モバイル・ファイナンスが携帯電話と一緒に普及してきたことで、一気に解決してきました。

それはまた、先進国市場とのダイレクトリンクを生み出し、国境を超えた雇用や資金の移動を可能としたため、家計収入の向上も導きました。

それが子供たちに教育の機会を与え、健康で安全な生活を送る環境も整備しました。

まさに、教科書で学ぶような開発モデルを地で行く姿を可能にしたといえます。

しかし、経済発展と並行して、軍備の近代化も進み、また人々の政治への関心の高まりも受けて、この10年、アフリカ大陸は様々な紛争を経験することにもなりました。「もっと、もっと」という心理は、隣国との緊張を高めています。

そこに付け入ったのが(言葉は悪いですが)、中国の一帯一路政策と言えるでしょう。「隣の国よりももっと成長したい」というアフリカ諸国の願いに手を(お金を)貸すことで、中国はその勢力圏を一気にアフリカ各国(特に東アフリカ諸国)へと広げ、欧州各国とアメリカから、アフリカを奪い去っていったのも、この10年の大きな変化でしょう。

これまで欧米の支援を受けていた際には、人権尊重や政治体制の民主化といった条件(conditionality)が付けられ、それがアフリカ諸国の反感を買っていましたが、「内政不干渉の原則」を表面上とる中国は次々とアフリカ諸国を取り込んできました。

それで何が起きたかというと、独裁体制の強化と存続の温床の基盤づくりです。中国にとっては、コロコロと政権が変わるよりも、コミットした政権が存続し、利益創出の基盤が固定化するほうが便利ですので、中国の支援が独裁体制を強めるという悪循環を作り出したといっても過言ではないと思います。

経済発展と近代化が著しいアフリカ諸国の、未来に向けての頭痛の種は、伸長する中国の影響力とコントロールという経済・外交的な内容もありますが、強まる独裁体制と縁故主義での政治・ビジネスの実践という、消えない悪弊でしょう。

これらは10年経って改善されるどころか、恐らく悪化した例かと思われます。

アジアと並ぶ成長のエンジン、そして最後のフロンティアになれるか否かは、いかにして市場の透明性と投資フレンドリーな環境を築けるかにかかっているといるでしょう。

この10年で大きな成長は遂げましたが、飛び立つにはまだ多くの宿題に直面しているといえるでしょう。次の10年が勝負どころと言えるでしょう。

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