他の例では、大統領就任後、「歴史的な理由で、エジプトとUAEは許さない」という方針を外交の軸に据えるようになりました。ちなみに、NATOの同盟国であるトルコが、ロシアからS400を購入・配備し、トランプ大統領を激怒させた事件を覚えてらっしゃるでしょうか?
私も以前書きましたが、経緯としてはオバマ大統領にパトリオットミサイルの配備を断られたことへの腹いせという側面もありましたが、エジプトやUAEと、仲が悪いわけではないのですが、あまりうまくいっていない“大国”であるロシアからの最新鋭ミサイルを配備して、関係を深めることで、両国への圧力強化のイメージ戦略という側面があったようです。
それが理由の一つとなり、中東におけるアメリカの立場を不安定化したという理由でバイデン大統領からは非難の的になり、バイデン政権発足後すぐのNATO首脳会議(オンライン)で“トルコに対する懸念”と“友人を選べ”という最後通告を受け、同時にアメリカの対中東戦略が、トランプ政権に比べて距離を置く方針であることを見て取り、中東戦略を180度転換することになったようです。
今週、突如行われたチャプシオール外相のエジプトとイスラエルへの派遣と、協力体制の構築の要請はその表れです。どちらも会談は拒みませんでしたが、エジプトについては、サウジアラビア王国やUAEからのpeer pressureに加え、これまでの対エジプト攻撃への怒りも手伝って、「トルコの妥協は評価するが、まずは行動で示せ」と突き放す形を取っています。
サウジアラビア王国やUAEにとっては、中東において除け者にしようとしたカタールを全面的に支えて対立構造を極めたトルコの方針は、それぞれの地域における影響力を著しく削ぐことになったため、許すことが出来ず、トルコの“狙い”は頓挫寸前と思われた矢先、エルドアン大統領は外交的なカードを切ることで対立を抑えるという奇策に出たようです。カジョギカードではないようですが、両国に「トルコの真意は見えないが、とりあえず話は聞いてみたい」と言わせるようになっています。驚きです。
ここまでは、自らの生存と繁栄のためにはいくらでも色を変えるカメレオン的な手腕と笑うこともできますが、トルコ政府の在外トルコ系民族を扱う手法と方針には理解できないポイントが多くあり、矛盾を感じてしまいます。