矛盾だらけのトルコ。「同胞」のウイグル人を弾圧する中国にダンマリの訳

 

まず、在ドイツのトルコ人の“位置付け”については、「トルコ人」であり、トルコのEU内のエージェントという表現が、あまり表向きには出てきませんが、されることがあります。EU加盟が叶わない見込みのトルコですが、欧州のイメージとなっているような企業のオーナーシップをはじめ、欧州経済に不可欠な存在として君臨する際の同胞だそうです。

エルドアン大統領がドイツ訪問時には、かなり多くのトルコ人との会合がもたれています。前回は、トルコでの総選挙前の時期で、在独トルコ人にAKPへの投票を要請したことで、ドイツ政府が禁止する国内での外国政府の政治行動に抵触すると抗議を受けましたが、本国とドイツ在住のトルコ人とのつながりは強固で、欧州経済に大きな影響を与えるベースは存在します。

次に、記憶に新しいのが、アゼルバイジャンとアルメニアとの間で、その帰属について戦われたナゴルノカラバフ紛争でのトルコのコミットメントです。ソ連崩壊の混乱期に、その時に力に勝るスラブ系アルメニアにナゴルノカラバフを奪われ、その後、実効支配されてきたアゼルバイジャンの苦境に立ちあがったのが、隣国トルコでした。

同じイスラム教徒で、かつトルコ系民族であるアゼルバイジャンに軍事・経済面で支援を供与することで国力を高め、今回のナゴルノカラバフ紛争ではトルコ軍まで派遣させ、トルコが供与した最新の兵器をもって、ナゴルノカラバフを奪還しています。

トルコのコミットメントの狙いには、いろいろな説があります。ロシアからナゴルノカラバフにおける影響力を奪い、トルコの勢力圏をコーカサス方面にも伸ばし、トルコのエネルギー安全保障を強固にするという説が有力ですが、この際、トルコ・エルドアン大統領が言った「不条理に苦しむ同胞を見捨てることはできない」という言葉が気になります。

ナゴルノカラバフ紛争の帰結については、以前、詳しくお話ししておりますので今回は触れませんが、この“言葉”が本当ならば、完全に矛盾するように思われる事例が、意外なところにあります。中国共産党政府が弾圧し、支配を確立する新疆ウイグル地区とウイグル人の中国人化政策です。

欧米諸国からは人権侵害の典型例として激しい非難が中国に浴びせられ、それに対して中国政府は『内政干渉だ』と取り合わない状況ですが、弾圧の対象になっているウイグル人が“トルコ系民族”であることをご存じでしょうか?正直、私は恥ずかしながら、最近まで認識していませんでした。

であれば、内容については詳しく知らないものの、新疆ウイグル地区でウイグル人(トルコ系民族)に行われている行為は、確実に不条理なはずですが、エルドアン大統領およびトルコ政府が、この不条理に反応している場面に出くわしたことがありません。なぜでしょうか?

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