いろいろと尋ねてみるのですが、普段饒舌で、いろいろと語りたいトルコの“友人”たちは、本件については一斉に言葉を濁すか、閉ざしてしまいます。「話したくない」という意思は尊重しますが、私が気になったのは、かなり多くの友人たちが口にした「その問題について触れることは、トルコではタブーだ」という言葉です。
それは、年々深まるトルコ経済と中国経済との結びつきの強化でしょうか?トルコにまで至る中国の影響力の拡大が背後にあるのでしょうか?ハッキリとしたことは分かりませんが、私が推測するに、中国政府が欧米からの人権に関しての非難で必ず使う「内政干渉」というキーワードが大きな理由にあるのだと考えます。
トルコにとっての内政問題は、国内のクルド人への弾圧です。このクルド人問題は、イラク問題やシリア問題にも深く絡み合い、トルコを両方の内戦に関与させる大きな要因となっていますが、その際に必ず用いられる理由付けが「クルド人問題はトルコの国内問題で、かつトルコの国家安全保障上の問題」という内容です。
響きが中国政府の新疆ウイグル地区に関わる問題や香港国家安全維持法を巡る問題で使われる理由に似ていないでしょうか。国際社会がクルド人問題に触れ、トルコの対応を非難する際、トルコ政府は100%、「内政干渉だ!」と反論します。だとしたら、ただの妄想かもしれませんが、もしかしたら、中国政府とトルコ政府との間で、相互に“国内問題の闇”についてはコメントしないという密約でもあるのかもしれません。
または、中東における“マウンティング”方針が通用しない中国が相手だからという理由も考えられます。ただ、その理由はともあれ、ナゴルノカラバフ紛争の際には「不条理に苦しむ同胞を護るのがトルコ」と胸を張って言っていたトルコ政府の外交的、そして軍事的な介入の方針の矛盾がここに見えるような気がします。
トルコはこれからも成長を続け、それにつれ、外交的な発言力や影響力を取り戻すことになると思われます。トルコも他の国と同様、例外なく新型コロナウイルス感染症のパンデミックの負の影響をもろに受けましたが、フィッチの予測では2021年年率にして6.7%の経済成長が見込まれていて、それはくしくも中国の全人代の最終日に李国強総理が発表した中国の成長率見込みと同じ数字ですが、トルコは経済的な基盤も強固になってきています。中国との違いがあるとすれば、トルコの出す統計値は透明性が高く信頼が高いということでしょうか。
トルコが真のパワーハウスの地位に戻るためには、場当たり的な外交ではなく、方針の軸がぶれない対応をしてもらいたいと願っています。どのような国も政策や対応の一貫性に矛盾を秘めている。それが、もしかしたら、国際情勢の裏側の真実なのかもしれません。皆さんは、どうお考えになりますか?
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