モバイルメッセンジャーアプリ「LINE(ライン)」は、中国にあるシステム開発委託企業で個人情報が閲覧可能だった問題の対応策として、中国からのアクセスはすでに遮断し、韓国で管理している画像等のデータについても国内移転予定と発表しました。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、前回「中国企業への業務委託NGは加速するのか?」で懸念を示したように、一部委託業務も終了するとのこと。国境がないインターネットの世界で、国民感情への配慮が求められることに対し、少しの違和感とともに伝えています。
LINEが個人情報データの国内化を発表――出沢社長「おかしい、気持ち悪いへの配慮に欠けてきた」
LINEは3月23日、取り扱う個人情報データについて、国内化を進めていくことを明らかにした。これまで中国から日本ユーザーの個人情報にアクセスできる状態にあったが、すでにアクセスを遮断。LINEのコミュニケーションに関連する機能・サービスにかかる機能開発・保守については中国での業務を終了させる。また、LINEのメッセージにおいて、画像や動画ファイルは韓国のデータセンターに保存されているが、2021年6月までに国内に移転する予定だ。
LINEの出沢剛CEOは今回の問題点について「ユーザーへのわかりやすさ、配慮が欠けていた。ユーザーの感覚でおかしい、気持ち悪いと言うことにセンスや配慮というか気を回すことができなかった」と反省していた。
一方で、グーグルやアマゾンなどアメリカの企業が日本のユーザーの個人情報をアメリカで扱うことに関しては寛容なのが不思議だ。やはり国民感情的に中国や韓国に対してはそもそも嫌悪感を抱いているからこそ、個人情報が扱われることに不快感を示すのか。
韓国のデータセンターで保管されていた件に関しては舛田淳CSMOは「かつてはLINEは海外でもユーザーがおり、アジア圏、中東、ロシアなどのユーザーに向けて、ひとつはレイテンシーが小さくなる場所が韓国だった。また、高いセキュリティが担保され、人材がおり、コストに見合うという点も大きかった。当時、韓国のNAVER社の子会社だったことから韓国のデータセンターが選ばれた」とのことだった。
中東やアジアのユーザーに向けて、韓国が立地的に優れるとなると、他のSNSやウェブサービス会社も韓国で個人情報を保管している可能性が極めて高い。もちろん、日本のデータセンターも、アメリカ企業との取引が数多くある。
先日、とあるデータセンターに行ったことがあったが、関係者から「●●はこのデータセンターを使っている」と耳打ちしてくれた。AIで有名なアメリカの会社が、こんなところにもデータセンターを置いているとは、と驚いたのであった。
インターネット企業はグローバルでサービスを提供しており、それぞれの地域にデータを分散させているはずだ。
サービス提供側から見れば、LINEの件はさほど騒ぎ立てることでもないように感じるが、一般ユーザーの感覚としては「気持ち悪い。怖い」ということになってしまうのだろう。これから安心安全を掲げながらサービスを提供するには、国民感情という空気を読んでいく必要がありそうだ。
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