外務省は、一筋縄ではいかないミャンマーの国情に対応するため、スー・チー氏、フライン国軍総司令官の両者と話のできるミャンマー専門家、丸山市郎氏を2018年から駐ミャンマー大使として派遣している。
丸山大使は、イスラム系少数民族ロヒンギャが、軍の掃討作戦を受け、数千人が死亡、70万人以上が国外に逃れたさい、国軍によるジェノサイドを否定した人物だ。
2018年に国連が派遣した事実調査団は、国軍のフライン総司令官をロヒンギャに対する戦争犯罪、人道に対する罪、およびジェノサイド罪で「訴追」されてしかるべき人物と結論づけている。それでも、日本政府はその翌年、フライン総司令官を招待し、厚遇したのだ。
前掲のブログにも書かれている通り、笹川氏はこの丸山大使を、ミャンマー外交の立役者として高く評価している。日本とミャンマーの関係を語るとき、笹川氏と丸山氏の存在を無視することはできない。
日本財団ジャーナルによると、ミャンマーにのめり込む理由を聞かれた笹川氏は、こう語ったという。
「戦後すぐ、日本が食糧不足で苦しんでいた時、英国から独立したばかりのあの国が安くコメを輸出してくれました。親父は『あのビルマ米が日本を救ってくれた。今度は日本がその恩返しをしなきゃならん』と繰り返し言っていましたよ」
父、笹川良一氏の思いを引き継いだということだが、それならばなおのこと、軍の弾圧を受けているミャンマー国民の悲痛な声に耳を傾けるべきではないか。
国軍のうちの利権勢力をミャンマーの政治から放逐し、民主的な政権としっかり手をつないで、中国の脅威にも対処していくのが、日本のあるべき姿であろう。
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