丸紅お前もか。日本の大企業と民衆大虐殺ミャンマー国軍との蜜月関係

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2月1日のクーデター勃発以来、歯止めのかからぬミャンマー国軍の暴走。国際的な批判が高まる中、同国との関係の深さを常々アピールしてきた日本政府は、強い措置を避けています。その裏にはどのような事情があるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、我が国とミャンマーとの歴史を改めて振り返るとともに、日本がミャンマー国軍に配慮し続ける理由を考察。その上で、当問題における日本のあるべき姿を提示しています。

日本政府がミャンマー国軍への制裁を避ける真の理由

クーデターを起こしたミャンマーの国軍が市民に銃を向け、デモ参加者だけでなく、通行人や、罪の無い子供の命まで奪ってゆく。あまりに残忍で非道だ。その光景を多くの市民が危険を承知で撮影し、SNSで発信している。世界に窮状を知らせたいからだ。国軍の暴力を止めるため、各国に力を貸してほしいからだ。

とりわけ、ミャンマーの人々が頼みの綱にしているのは、日本政府だ。世界でいちばんミャンマーに経済援助をしているし、国軍とも縁が深い。だが、これまでのところ、日本政府がミャンマー国民の期待に応えようとしているとは思えない。その背景に何があるのだろうか。

ミャンマー国民は、2020年11月の総選挙で、アウン・サン・スー・チー氏率いる与党「国民民主連盟」(NLD)による政権を再び選択した。改選476議席の8割を超える396議席をNLDが獲得。2015年11月総選挙の地滑り的勝利を再現するかのような結果だった。

むろん、今のミャンマーに、「最後のフロンティア」ともてはやされたころの勢いはない。外国からの投資額が伸び悩み、新型コロナのせいで頼みの観光業もさえない。スー・チー政権の課題である少数民族問題も、解決にはほど遠い状況だ。それでも、国民はスー・チー政権を選んだのだ。

この総選挙にあたって、日本政府から選挙監視団が送り込まれた。団長となったのが日本財団(旧日本船舶振興会)会長、笹川陽平氏だ。外務省は、ミャンマー少数民族和平問題担当の日本政府代表でもある笹川氏について、「ミャンマー少数民族居住地域における学校の整備、薬の支援、農業支援等に長年にわたり尽力」とホームページで紹介している。

笹川氏は同じく監視団長をつとめた2015年の選挙に関し、講演で語った内容を、2016年1月26日の自身のブログに掲載している。

メディアの方というのは疑い深い方々も多く、昨年、選挙が行われる前には、多分、不正選挙が行われるだろう。軍部がインチキをするのではないか。そのような疑いがあり私も日本の選挙監視団長として入ったわけですが、大変見事な選挙でした。…私は開票の状況をずっと立ち会って見ていましたが…1票ずつ丁寧に手続きを踏む非常に透明性の高い開票作業でした。国際メディアの中には、アウンサンスーチー女史の党が大勝したので軍に不穏な動きが出るのではと疑問視したところもありました。

軍部が不正選挙をするというのは下衆の勘繰りで、スー・チー氏の党が大勝しても、軍部はなんら不穏な動きをしなかった。つまり、軍部をもっと信じなさい、というわけだ。

2020年11月の総選挙でも、笹川氏は監視団長として、同じように公正な選挙を確認したことだろう。不正なら不正と指摘するのがお役目だが、そんな話は出ていない。

その選挙でスー・チー氏率いるNLDが大勝した。ところが、ミャンマー国軍は「不正選挙が行われた」と主張し、総選挙後の初の議会が開かれるはずだった2021年2月1日、ウィンミン大統領やアウン・サン・スー・チー国家顧問を拘束、ミン・アウン・フライン国軍総司令官が全権掌握を宣言した。

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