●uttiiの眼
バブル経済の頃、あるフリーの「不動産業者」を取材したことがあった。電話1本で富裕層に別荘などを売る商売だったが、そんなことが可能だったのは、大枚を払って手に入れた様々な名簿を掛け合わせ、営業を掛ける相手先のリストを作り上げていたからだった。資産があって、別荘を買ってくれそうな対象者がリストアップされていれば、あとは電話を掛けるだけ。使われた「リスト」は“美味しいカモのリスト”として、さらに他の業者に高値で転売されていく。
デジタル改革関連法案が成立すれば、津々浦々の個々人の病歴や資産状況のデータにクエリー(データベースに対する要求)を掛け、あの不動産業者が苦労して手に入れていたようなリストを、たちどころに何種類も作ることが可能になる。情報は、「カネのなる木」そのものと言って良いだろう。もちろん、行政機関、とくに警察は、こうした情報へのアクセスに大きな魅力を感じるだろう。とてもではないが、チャチャっと通して良い法案ではない。
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