国民の命など二の次。ミャンマーの混乱を利用する卑劣な国の名前

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先日掲載の「卑怯な中国とロシア。国民虐殺のミャンマー国軍に恩を売る真の狙い」でもお伝えしたとおり、混乱を極めるミャンマー情勢。市民に対する国軍の蛮行は許しがたいレベルにまで達していますが、各国とも問題解決に積極的とは言い難い姿勢を取り続けています。そこにはどんな思惑が渦巻いているのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、ミャンマー国民の味方が皆無という非情な現実を記すとともに、関係諸国の外交戦略を解説。さらにこのままではミャンマーの混乱はシリア情勢よりも悪化する可能性があるとの懸念を示しています。

【関連】卑怯な中国とロシア。国民虐殺のミャンマー国軍に恩を売る真の狙い

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地獄絵図となったラストフロンティア~国際政治の草刈り場になったミャンマー

2月1日に強行された国軍によるクーデターは、10年にわたったミャンマーの民主化と経済開放を通じて「最後のフロンティア」とまで呼ばれた発展にピリオドを打ちました。

そのクーデター発生からもうすぐ3か月。国軍とその総司令官であるアウン・ミン・フライン氏が意図した国の在り方の全貌は明かされないままですが、日を追うごとに激しさを増す国軍による自国民への武力行使と蛮行は、ミャンマー/ビルマの存在と統合(integrity)を根本から崩壊させる坂道を転げ落ちて行っている気がします。

3月27日の国軍の記念日を境に、フライン総司令官は国際社会からの孤立など意にも介さないかのように、自らが描き、信じる“わが道”をひたすら突き進んでいるように思います。多くの国民の犠牲とともに。

クーデター発生直後、NLDとスーチー女史から、国民の支持を切り離すべく、これまで遠ざけ、攻撃してきた国内の少数民族と彼らの武装勢力を取り込もうとしてきましたが、それらが不発に終わり、国軍vs.その他という対立構造が国内に作られてしまいました。

その結果、以前にもまして国軍による少数民族への攻撃が激化し、武力差は歴然でありつつも、ミャンマー国内は内戦状態に陥りました。

【国軍による市民への武力行使は決して容認しない】

この方針は、欧米中ロという“サイド”関係なく、国際社会がシェアするものですが、非難はするものの、どの国も目立った行動に至っていません。

一番顕著なのは、米バイデン政権が強化する経済制裁や、欧米による人権侵害への非難ですが、すでに国際社会からの孤立を厭わない国軍に対する決定打にはなっていません。

実際には、ここ3か月弱、ミャンマー情勢をめぐる国際的な動きは、ミャンマー国民へのシンパシーの陰に隠れた「大国間の国際政治上の駆け引き」の舞台と化しているように思われます。

悲しいことに、調べれば調べるほど、誰もミャンマー国民の味方がいないというのが実情でしょう。

例えば、欧米諸国は、国軍とその幹部に対する制裁を強化して、ミン・フライン総司令官の翻意を促す作戦に出ていますが、実際の狙いは、東南アジア地区における核となる地政学的な位置を占めるミャンマーが、Red Teamに堕ちていかないようにしたいという思惑です。

すでにイラン情勢で見てわかるように、制裁による締め上げがRed Teamへの接近を防ぐというよりは、助長・加速していますが、ミャンマーでも同じような傾向が見え隠れしだします。

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