国民の命など二の次。ミャンマーの混乱を利用する卑劣な国の名前

 

クーデターに驚きを見せた中国共産党

クーデター発生直後は、私も書きましたが、中国黒幕説がありましたが、実際には、中国政府は、スーチー女史のNLD政府とも密接な関係を築き、どちらかというと国軍勢力よりは近かったようにも見えます。

10年間のミャンマー経済の外資への開放の一番の恩恵を受けたのは、おそらく中国ですし、このタイミングであえて国軍に乗り換える必要はなかったと思われます。

確かにNLD側が中国への依存度の高まりに危機感を抱いたという話もありますが、ロヒンギャ問題などで欧米諸国と資本が退く中、ミャンマーの発展を変わらず支えたバックボーンになっていたのは中国ですので、NLDが中国に“楯突いた”という説も信ぴょう性は不明です。

真偽のほどはわかりませんが、いろいろな情報筋との意見交換の中ででるのは、「ミャンマー国軍によるクーデターには、北京も非常に驚き、対応に困った」という見解が強いように思われます。

中国政府も、他国にもれず、国軍による市民への武力行使に対しては容認しない立場を打ち出していますが…これ、新疆ウイグル地区の案件を見てみると、思い切りダブルスタンダードに感じてしまいますが、これまでのところ、うまく(?)切り離して対応しているように見えます。

ASEANの支持をめぐって、もう一か国キープレイヤーがいるとすれば、南アジアの大国・インドです。

インドとしては、中国の影響力があまりにもASEAN諸国に及びすぎ、ASEANが中国の勢力圏や経済圏に組み入れられることは自国の安全保障問題になると考えています。

その目的を果たすべく、インド政府も巧みにミャンマー情勢を利用しているように思われます。

「完全なる民主主義国」との自負から、「民主主義の回復のためには、ミャンマーにはインドが必要」という図式を形成しようとし、中国がミャンマーに襲い掛かる国家資本主義や独裁との対立軸となることで、地域の大国としての立場の維持拡大に乗り出しています。

一言でいえば、「対中牽制」のためのコミットメントでしょう。

そのために、インド政府は国軍とは距離を置きつつも真っ向から非難はせず、自制を促す程度で止まっています。同時に、民主化運動勢力が立ち上げた暫定政府に対しても支持・支援を明らかにしており、ミャンマーの混乱の中でも、他国に比べて、positiveな感情ベースを獲得しているように思われます。

ミャンマー国内での対応と同じく、欧米vs.中国(ロシア)というメインの対立とも距離を置き、良くも悪くも独自路線を貫くスタイルで、インド太平洋地域における第3極的な立ち位置を維持できています。

しかし、どの陣営においても、自らの影響力の維持・拡大という目的が明確になる半面、肝心のミャンマー国民の安全と安心が二の次になってしまっていることも確かなように見えてきます。

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