日本にとって最悪のシナリオ。中国経済をどん底に叩き落とす「民主化」の罠

 

では、このバイデン対中外交は機能するのでしょうか?

短期的には機能するでしょう。先端技術における特にハード面でのアメリカの優位性喪失とか、習近平への劇場型権力集中体制など、色々な難しさはあるものの、当面は「経済のウィン・ウィン関係」というのは成立するだろうし、「価値観における舌戦」も過去ずっとやってきた演目だからです。軍事バランスも最後にはお互いがコストダウンのために軍縮テーブルにつくまで、とりあえず発火させずにバランスを取ることは不可能ではないと考えられるからです。

問題は中長期です。

その先の中国がどう振る舞って行くのか、特に2025年以降、2050年までといった時間軸を考えた場合に3つのシナリオを想定しておく必要があると思います。

1つ目は、このまま経済、技術、軍事の各方面で中国が成長を続け、堂々たる先進国となり、人民元が基軸通貨になり、小米や華為などのOSを搭載したスマホ(またはその代替のウェアラブルとか人体埋め込みとか)が世界を席巻し、中国式の社会統制で環境や感染症のコントロールを世界規模で実施するところまで、中国が成長するというシナリオです。

私はその可能性はほとんどゼロであると考えています。政治も、企業も、そして軍隊もそうですが、規模が大きくなると強い理念で統御していないと、大規模化した権力はかならず腐敗します。公私混同が起こり、それが見逃されると現場の士気は下がり、やがて組織には「ほころび」が生まれて、全体がゆっくり崩壊に向かうということがまず起きるでしょう。

また、政治を上位にして、経済の方はある点を越えた(例えばアリババ)規模となって、政治にとって脅威となるようだと処分されるとなれば、当然、そのような規模に接近した企業は、政府との癒着を図るか、あるいは国外に脱出を図ることになります。安定的に成長を続けることはできないでしょう。

何よりも、世界を支配するまでの巨大な経済、先進的な技術、効果的な軍事力を実現するには、様々な「問題解決」を積み重ねて行く必要があります。そこで、中国のような「大きすぎる組織、弱すぎる理念、本音むき出しの政治闘争」という風土をそのままに進むと、結局のところは「個別の問題解決にあたって最適解が出ない」ということが繰り返されます。

print
いま読まれてます

  • 日本にとって最悪のシナリオ。中国経済をどん底に叩き落とす「民主化」の罠
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け