NYタイムズも言い出した五輪延期・中止。訪米に浮かれる菅政権の末路

takano20210419
 

4月19日、記者団の質問に対して「9月までに国内すべての対象者にファイザー社のワクチンを供給できる目処が立った」と答えた菅首相ですが、世界は日本を「コロナ封じ込め失敗国」とみなしているようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、東京五輪の中止もしくは延期を訴える海外メディアの記事内容を引きつつ、菅政権に対して世界が「政治的指導力の欠如」との評価を下している事実を紹介。その上で、日本がなしうる世界への貢献について私見を記しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年4月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

不要不急の外遊なんかしている場合じゃないでしょう、菅さん!――『NYタイムズ』も言い出した東京五輪延期・中止論

国民に対して「不要不急の外出」の自粛を要求している最中に、その国内の深刻化するコロナ禍を後に自分が「不要不急の外遊」に出かけるというのは、いかにも辻褄が合わないのではないですか、菅義偉首相。

本誌が前々から指摘してきたように、4月にリバウンド、5月から6月に第4波が盛り上がって7月にピークか?という多くの信頼すべき専門家の予測はその通りとなり、余り信頼すべきでない専門家である尾身茂=政府分科会会長でさえも「第4波と言って差し支えない」と公言している。さらに15日には自民党の二階俊博幹事長がTV番組の収録で「感染拡大が収まらない場合は中止も選択肢」と、この人にしては珍しく正しいことを言って波紋を呼んだ。

この瀬戸際の状況では、総理大臣はその最前線に留まって指揮をとる姿を国民に晒し、何としても第4波を抑え込んで五輪を実現するのだという確固たる姿勢を示さなければならないはずなのに、そこを外して、訪米で成果を挙げればコロナ対策での躓きをカバーして支持率を上げられるかもしれないと思うところに、政局戦術はあるが政治戦略は不在の菅の限界が表れている。

希望的観測だけでは五輪は開催に漕ぎ着けない?

ところが、これも本誌が前々から言うように、菅の政治判断はいつでも「希望的観測」最優先である。

1.五輪までは3度目の「緊急事態宣言」は絶対に出さないようにしたい〔という大前提に立って〕。

2.とはいえリバウンドがありうるので、その場合は「まん延防止等重点措置」という、緊急事態宣言よりはちょっと緩めなのかという印象を与える言葉の綾だけに頼って、実質はほとんど同じ「外出自粛と店舗時短」だけで何とか乗り越えられないか。

3.聖火リレーも、始めてしまえばだんだんお祭り気分が盛り上がり、聖火リレーが始まっているのに今更五輪の延期・中止はありえないという国民の意識が高まるだろう。

4.その辺りでちょっと目先を変えるジャブで、訪米をセットする。バイデン米大統領と世界で最初に対面した他国の指導者であり、それほど菅は米国に重視されている大物なのだということを、対内的にアピールしたい。

5.以上が全部希望通りに転がれば、東京五輪は実現し、その“成功”を背景に9月解散・10月総選挙、そこそこの勝利で菅政権は継続……。

という、すべてが最も楽観的な方に針が振れた場合の見通しに基づいて、シナリオが組み立てられている。

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