あの天安門事件から32年。2021年6月4日が世界で「最も危険な日」になる訳

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あの「天安門事件」から6月4日で丸32年。中国の学生らによる民主化運動として、そして残虐な弾圧があったことでも知られる、中華圏に暮らす人々にとって忘れることのできない大規模クーデターです。毎年、香港でおこなわれてきた同事件の犠牲者を弔う追悼集会ですが、今年は例年とは大きく事情が異なるようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、多くの民主活動家たちが逮捕され拘留されている今年の香港は、6月4日の集会が「世界で最も危険な日」になるだろうとし、その理由について詳述しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年5月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国・香港】今年の「6月4日」は例年と事情が異なる理由

32年來「最凶險」港支聯會照辦六四晚會(32年で「もっとも危険な」64天安門追悼会に)

1989年6月4日の天安門事件から今年で32年、香港では毎年6月4日にビクトリア公園で、天安門事件の犠牲者を追悼する「晩会」(夜の集会)が開かれてきました。

2020年には新型コロナウイルスを理由に香港当局が集会を禁じたにもかかわらず、設置された柵を突破して1万人以上がビクトリア公園に集まりました。

【天安門事件から31年】追悼の灯を絶やさない香港の人々。集会禁止の封鎖を乗り越え、会場に1万人殺到

しかし、今年はいつもと事情が異なります。というのも、昨年6月末に中国政府が「香港国家安全維持法」を施行し、香港の反体制活動を禁じたからです。その結果、民主活動の女神と称される周庭(アグネス・チョウ)氏やアップル・デイリー(リンゴ日報)紙の創業者・黎智英(ジミー・ライ)氏など、多くの民主活動家が逮捕されました。

冒頭のニュースは台湾の「自由時報」のものですが、今年の「晩会」がどうなるか、すでに台湾のメディアは大きな関心をもって報じています。もちろんこれから世界のメディアも次々と懸念を報じるでしょう。

長年、香港で天安門事件の追悼会を主催してきたのは「香港市民支援愛国民主運動連合会」(支連会)という団体で、追悼会の正式名称は「六四燭光晩会」といいます。キャンドルを灯して、犠牲者を追悼するのです。

追悼会では「結束一党専政」(中国共産党の一党独裁を終わらせよう)というスローガンが書かれたパネルなどが掲げられます。ちなみに「結束」は日本語では「まとめる、団結する」といった意味ですが、中国語では「終わらせる」という意味です。

先週、民主化学生運動のリーダーで、国家安全維持法違反で現在収監中の黄之鋒氏らが、昨年の「晩会」に結集したことについて、不法集会の罪を認めたとされており、初めてこの「晩会」への参加が犯罪となったことで、今年の集会への関心が高まっているのです。

支連会幹部の話によれば、今年も予定通りに「晩会」を開催する予定だそうですが、「結束一党専政」というスローガン自体が香港国家安全維持法違反に問われる可能性もあり、再び大きな混乱や多くの逮捕者が出ることも予想されています。

支連会は、かつて最大時は汎民主派(親中派に対して民主各派を総合しての呼称)の立法委員(国会議員)の多くが所属していましたが、中国の締め付けが強くなるにつれ、次第に厳しくなりつつあります。

今年の4月には、支連会の主席である李卓人や、元主席で香港民主党の前主席や立法委員も務めた何俊仁が、香港国家安全維持法違反で有罪判決を受けています。

支連会は、天安門事件で犠牲になった人々の遺品などを展示する「六四記念館」という博物館を運営していますが、これも香港国家安全維持法に違反し、国家政権転覆罪などに問われる可能性が囁かれています。

そのため、実際の記念館は閉鎖し、ネット上にオンライン記念館を開設する動きが進んでいます。このことは日本でも報じられました。

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