リモート会議で上司が部下に「顔出し要求」はハラスメントになるか?

 

上司がそのことに気づかずに管理職権限で押し切ろうとすると、ますます話はこじれます。あげくのはてに、「そもそも、この会議に意味があるんですか」と、論点のすり替えまで起こされてしまいます。

そこで共感的理解の姿勢で相手の気持ちを想像し、「まあ、そう感じるかもしれないよな」と、いったん感情を受け止めて尊重し、できるだけ心理的な抵抗感を和らげるための配慮を実施します。

たとえば、「心理的な抵抗があるかもしれないので……」
「バーチャル背景を使ってもいいですよ」
「希望者には背後の視界を遮るカーテンを会社が支給します」
「マスクをしたままでもいいですよ(目だけは出してね)」
「社内打ち合わせの場合はリラックスした私服でかまいません」
「通信費用が個人負担とならないよう補助金を支払いますね」

さらに上司は何が見えても、何が聞こえても、部下のプライベートに立ち入るような発言は一切慎むこと。上司と部下の関係に限らず、同僚、顧客、関係会社など、さらに、プライベートな関係においても対人関係があるところすべてで、私たちは「論理的納得性」と「感情的納得性」の両方に配慮すべきです。

反発してくる相手に対しては、「共感的理解」のセンサーを働かせて裏に潜んでいる感情を理解しようとします。もし、そこに反発の原因がある場合は、理屈でいくら論破しても問題は解決しません。

社内共通の問題は会社に仕切ってもらう

今回は、オンライン会議の顔出し問題を例として論理的納得性と感情的納得性について紹介してきました。最後に、実際に顔出し問題が職場で起きた場合の適切な対処法について述べておきます。

感情的納得性は2人の間の信頼関係の度合いに影響を受けますが、それは同じ部下でも人によって異なってきます。ギリギリ「しかたないな」と思う部下もいれば、最後まで抵抗しようとする部下もいるでしょう。感情的納得性には個人差があるのです。

そこで、「顔出し問題」のように感情的納得性に影響されやすい案件で、しかも会社全体で共通の問題である場合は、上司と部下といった個人的な関係の問題として扱うのではなく、組織的にもっと上の問題として対処してもらうべきです。

たとえば、人事部案件として社内ルールを策定してもらい、人事部長名で全社員に通達してもらうなどです。大げさに思えるかもしれませんが、会社は断固としてハラスメントから社員を守る責任がある一方、言いがかり的なハラスメント問題から上司を守る責任もあります。

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