ただし、「プロポーザル方式」(定義が明確になっているかどうかは分かりませんが…)を試みるには、注意も必要です。
プロポーザル方式は、一定の条件の下で、複数の施工業者に工事の提案をしてもらい、その中から優れた提案を行った施工業者を選定する方式です。ですから、最初に、自分たちの希望と提案の自由度をきちんと提示しなければなりません。工事の内容はもちろんですが、トータル金額の上限の提示も必要になるでしょう。しかし、あまりそこを厳しくすると、新たな提案が出にくくなるので、バランスをとる必要があると思います。そのマンションに合った工事の提案をするには、調査や検討に手間がかかるので、参加する側も覚悟が必要です。
談合等も難しくなりますが、その分、依頼する側も誠意を持って臨む必要があると思います。提案者の数を多くするというより、どの提案者に決まってもいいと思う施工会社を厳選し、依頼する方がいいと思います。そして、参加者の提案を真摯に検討し、必ずどこかを選ぶようにします。
提案方式なので、各社の見積金額を同じ土壌で比較できないので、提案力をきちんと評価することが必要になります。提案させておいて、いいとこ取りで、A社のよい提案を金額が安かったB社にさせる…というようなことはやめたいです。
参加する施工会社は、管理組合側の真剣さと公正さを見ています。いい提案(金額も含め)をすれば、ちゃんと評価されて採用される…と思えば、施工会社も真剣に提案を出してくるはずです。その過程で信頼関係が築ければ、Aさんのように、施工監理を自分たちで行うということも可能になると思います。
私が尊敬する西京極大門ハイツ管理組合法人は、設計コンサルタントを入れずに施工会社に相談しつつ仕様を決め、直接、施工会社に工事を発注しています。信頼できる施工会社と縁ができているので、他と比較するようなこともしていないのです。理事会に対する組合員の信頼があるので、組合員を納得させるために、コンサルを入れて、何社か相見積もりを取らなくちゃダメというようなことがないのです。その分、かなりのコストが節減できているといいます。
そして、実際に工事をする施工業者には、最大限の敬意を払い、協力をしています。まず、施工業者の見積もりは、一切値切り交渉はしないといいます。営業的に利益の出ないことは続かないからです。それでも、西京極大門ハイツに対する見積もりは、他のマンションに比べ非常に安いと言います。
なぜ、西京極大門ハイツには安く出せるのかというと、ひとつには、意味もなく値切られることはないと分かっているから。そして、もちろん、コンサルにバックマージンを払わなければならないなんてことも絶対にない。そして、途中変更せざるを得ないことがあったときに、施工業者につけ回しはしない。工事が始まったら、工程通り工事ができるよう、居住者に協力してもらうため管理組合として最大限の協力をする。
だから、西京極大門ハイツの工事にはリスクを見る必要がないので、施工業者もぎりぎりで安い金額を出せるのです。そして、そこまで信頼して尊重されていれば、施工業者が工事に手を抜くようなことはないのです。
プロポーザル方式を入り口に、施工業者と信頼関係が築けたら、それは管理組合の財産になると思います。でも、第三者のコンサルが入って、数社の価格を比べて選ぶという形をとる方が公正で安くできるというのが一般的な価値観なので、変な誤解をされるようなことがないように、情報を常に公開し、理事会や専門委員会が信頼されるようにしてくださいね。
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