バイデン政権が描く新たな派遣拡大プラン
最後に、意外なことに、私はアメリカ・バイデン政権も、イスラエルとパレスチナの対立の高まりは、After Coronaの世界情勢において、中東との関係の整理を進めるうえで好都合だと考えているように思います。
これまでのアメリカの政権は、その担い手が共和党でも民主党でも、イスラエルとパレスチナの問題の仲裁に乗り出してきましたが、ことごとく失敗を重ねており、実際には「どう対応していいかわからなくなっている」と言えます。
そんな中、今回のイスラエルとパレスチナの間での武力対立のエスカレーションは、中東戦争の勃発を予感させ、それはまた地域における状況の行き詰まり・一進一退の状況に陥ることで、なかなかブレークスルーを見出せない袋小路を予感させます。
その場合、憶測だと笑われるかもしれませんが、バイデン政権は中東地域の力のバランスおよび、複雑に多重に絡み合った問題を一度、武力的な破壊によってガラガラポンとフラットにしてしまい、すかさず介入して新たな覇権拡大プランを実行するのではないかとも思っています。
ガラガラポンしたあと、その戦略がどちらの方向に向かうのかは不明瞭ですが、「国内ロビーへの配慮から、変わらずイスラエル寄り」になるのか、または、バイデン政権が人権重視という原理原則を大事にし、また就任時にはパレスチナへのシンパシーと連帯を表明していることから、パレスチナ独立国家づくりを後押しするようなプランを描くかもしれません。
それは、「いつ、ガラガラポンからの介入が起こるか」そして「誰の政権下で実行されるか」によって変わるかと思いますが、一つはっきり言えることは、ここでもまた、中東諸国の意志は、やはり無視されるということでしょうか。
また一般人の生命と安全が、各国の政治的な意図によって危険にさらされています。
最初に触れたとおり、国内における勢力争いが双方別々に存在し、それが相互間の武力衝突にまでエスカレートしている今回の戦い。その解決の糸口は見つかりづらく、ハンドリングを間違えると、アラビア半島全体を火薬庫に変え、多くの破壊がもたらされることになるかもしれないと懸念しています。
そんな中でも、国際政治の現実、そして地政学的な現実は、危機にチャンスを見出し、自らの勢力を拡大する機をとらえ、一般市民の悲しみと怒り、絶望の中に、喜びを見出して、思わずほくそ笑んでしまう“だれか”によって左右されるようです。
いつになったら心からの安寧が世界情勢に訪れるのでしょうか?私にはまだ、見えてきません。
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