ここにも中国の影。イスラエルとパレスチナ衝突でほくそ笑む指導者たちの思惑

 

トルコに中国、ロシア各々の思惑

3番目の候補として挙げることが出来るのは、トルコです。これには大きな疑問符がまだついているのですが、トルコの現在のポジショニングとしては、「ムスリムの同胞として、パレスチナとは戦略的な連帯」を保ちつつ、「イスラエルとは戦略的な対立構造」を作り出すことで、イランと同じく、トルコに向いているアラブ諸国からの敵意の矛先を変えたいとの願望が見え隠れします。

それと、ナゴルノカラバフ紛争を機に、コーカサス地方に勢力圏を伸ばしているように、シリア・レバノンにも手を伸ばし、同時に欧州も挑発することで、外交的な拡大路線を取っている流れに従い、アメリカが放棄した“仲介の役割”を狙っているといううわさがあります。

諸事情を見てみると、とてもうまくいくとは思えませんが、使える材料は何でも巧みに使うというエルドアン大統領の手腕は、新しい可能性を期待させてしまいます。

そして4番目の候補は、中国とロシアでしょう。両国とも、昨年来、中東への勢力拡大を実施中で、アメリカの空白を埋めるべく、中東諸国の武器供与およびエネルギー安全保障のカギを握るまでに拡大しています。

中ロの興味深い立ち位置は、「イスラエルと比較的良好な関係」を築いており、同時にアラブ諸国との連帯もどんどん強まっています。

そのような中、覇権拡大の策として、イスラエルとパレスチナの仲介を申し出るのではないかとの読みもできます。特に、その可能性に触れたプーチン大統領にとっては、堕ち切って、欧米を敵に回した状況から、Global Powerへの再浮上への絶好のチャンスになりえます。

中国にとっては、かねてよりイスラエルまで伸びるアラビア半島を“西アジア”と位置づけ、中国の一帯一路および大中華帝国復興構想の重要な拠点と見ているため、アラブに恩を売り、パレスチナとの連帯を訴えつつ、purely businessな観点からイスラエルとも取引することで、中国は中東地域における影響力拡大と確保に挑もうとしています。

中国も、ロシアも、すでにイランを獲得しているので、アラブ諸国との連帯を築くことで、包括的な反・対欧米陣営の形成を加速することが出来るというシナリオを描いているのではないかと思われる節がいくつかあります。

ただし、この狙いがはまるか否かは、両国のトルコとの距離感をどう取るかによって変わってくるかと思います。近すぎず、しかし、決定的な対立は避けるという微妙なバランスでのかじ取りが出来れば、中ロにとって、イスラエルとハマスによって引き起こされている報復の連鎖は、非常においしい状況になるかもしれません。

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