五輪中止で衆院選出馬か。総理の座を狙う小池知事の裏に二階氏の影

arata20210520
 

中止もしくは延期を求める国民が6割とも8割ともされる東京五輪ですが、そんな世論を追い風にしようとする向きも存在するようです。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、自民党本部で二階幹事長と面談を繰り返す小池都知事の「思惑」を推察。そこには、悲願達成のためなら五輪開催問題すらも政治利用するという、小池知事のしたたかな戦略が見え隠れしていました。

小池・二階は東京五輪中止へ動くのか

新型コロナ変異株が猛威をふるうなか、東京五輪・パラリンピックは、着々と開会式めざして聖火リレーが繰り広げられている。だが、メディア各社の世論調査では、東京五輪を中止または延期すべきだという人が圧倒的多数だ。

ただでさえ、コロナ患者の急増で病床は埋まり、医療スタッフが不足、病院のゆとりは失われ、入院すらままならない。そのうえ、世界から1万5,000人の選手と9万人ほどといわれる関係者、報道陣、スポンサー招待客らがやってくるのだ。

こんな状態で東京五輪ができるのか。アスリートたちの熱戦を見たいのは山々だが、フランスのル・モンド紙がいうように「変異株の祭典」になりかねない。

というような空気を政治利用し、小池都知事が「五輪中止」を言い出すのではないかなどと、自民党内で揣摩臆測が広がっている。

想像するに、こういうことだろう。今夏の五輪開催に否定的な世論を味方につけ、選挙の勝利につなげる。その場合の選挙とは、7月の東京都議選もあるだろうし、もしかしたら間近に迫る衆議院選挙を見据えているかもしれない。衆院選だとしたら、候補者は小池氏その人だ。もちろん、都知事を辞めて、である。辞任理由なら、五輪を招致した東京のトップとして「中止」の責任を取ると言えばよい。

だがここで疑問が湧く。そんなことをして、小池氏にどんなメリットがあるというのか。コロナ禍を乗り越えられず、五輪開催にこぎつけなかった不名誉が残るだけではないか。選手たちはもちろん、多くの関係者に迷惑をかけるし、辞めて衆院選に出るとしても、せいぜい都知事が衆院議員になるだけではないか、と。それはそうだが、国政復帰が、小池氏の悲願である女性初の総理への道につながると踏んだとしたら、どうだろうか。

菅首相を案じる自民党議員たちが気を揉むのは、今年に入り、小池氏がコロナ対策を理由に、頻繁に自民党本部を訪ね、二階幹事長と面談しているからだ。

東京のコロナ対策について話をしたと言う小池都知事の説明を額面通りに受け取る記者はいないだろうが、表向きの発表を客観的事実として伝える習性からして、以下のような記事になるのは仕方がない。

自民党の二階俊博幹事長は5月11日、党本部で小池百合子東京都知事と会談した。小池氏は緊急事態宣言の延長に伴う都の休業要請の継続に関し、国の財政支援の強化を求めた。(日経)

だが、コロナ対策なら西村担当大臣がいるし、それで不足であれば、波長が合わずとも菅首相に直談判すればいい。二階幹事長ならではの話があり、コロナ蔓延のおり、外で会うわけにはいかないから、党本部へ赴いたと考えるのが自然だ。

では、何の用だったのか。もちろん、選挙だろう。コロナ対策に超多忙な立場とはいえ、今秋までに行われる総選挙は、小池氏の今後にとって重要な意味を持つ。昨年、2回目の当選を果たした都知事だが、いつまでもこのポストに居続ける気はあるまい。総理をめざし、一度は民進党と合流して国政の新党をつくったほどである。

自民党を飛び出し党東京都連を敵に回したうえ、政権奪取の野心までのぞかせた小池氏を、自民党内から支えてきたのが二階幹事長だ。昨年の都知事選でも、小池氏の支持を表明し、党内の不満を抑えた。

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