五輪中止で衆院選出馬か。総理の座を狙う小池知事の裏に二階氏の影

 

多忙ななか、小池都知事はその二階氏と再三にわたって会っているのだ。いまやキングメーカーと称される二階氏は、菅首相の生みの親といってもいいが、新型コロナワクチン戦線に勝利した英国などと比較されて旗色が悪い菅首相を担ぎ続けるのも不安だろう。

もし、この機に乗じて、安倍前首相が再再登板ということにでもなれば、幹事長にとどまることはまずムリである。安倍氏と麻生副総理は、菅首相に幹事長交代の宿題を与えているほどなのだ。

二階氏もいまや82歳。そろそろ派閥の後継者をつくっておかねばならない。かといって、派内を見渡すと、伊吹文明氏といった長老がいても、総裁候補になりうるような人材がいない。

親分肌の二階氏は、自民党に挑戦状をたたきつけるように都知事選に出馬した小池氏の度胸に惚れ込んでいる。もともと二人は、新進党、自由党で小沢一郎氏の配下にいたころからの同志だった。

話は昨年2月4日に遡るが、小池氏は二階幹事長に都知事選への支援を要請するため党本部を訪ねた。そのさい、とんでもない依頼が二階氏からあり、あっさり引き受けた。

武漢発の新型コロナウイルスに見舞われた中国を救援するため、都に備蓄してあった防護服約30万着を、正式な手続きを踏まず、中国に寄付したのである。日本ではクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染に耳目が集中していた頃で、のちに防護服不足に陥るとは夢にも思わなかったのだろう。

密かにこういうことのできる間柄からみても、小池氏が二階氏の後ろ盾で自民党に復党し、二階派に所属してチャンス到来を待つ将来設計を描いているとしても、いっこうに不思議ではない。

もちろん、自民党を出て、都連や都議会自民党を「ブラックボックス」と罵った小池氏を嫌う空気は依然、党内に残っているはずだ。二階派とて例外ではない。しかし、小池氏の人気が今以上に上昇し、小池氏を担いで選挙に臨みたいという機運が盛り上がれば、状況はガラリと変わる。

菅首相の側近が心配するのは、そこまで狙って小池氏が「五輪中止」を言い出すのではないかということだ。

世論調査の数字を素直に信じるならば、変異株が猛威を振るうなかで五輪開催に走るIOCや日本政府に対し、小池都知事が「五輪中止」を敢然と掲げたら、小池人気が高まる可能性はある。その場合、菅人気は逆に落ちるだろう。

菅首相が小池氏を嫌っているのはよく知られた通りだ。男社会に飛び込んで、「ジジ殺し」と評されながら政財界の大物に近づき、引き立てられ、のしあがっていった小池氏のしたたかな処世術には、さまざまな見方がある。

その小池氏に、菅首相が命運をかける東京五輪の開催をやめるよう提案されたとして、菅首相が素直に応じるとは思えないが、世論が小池氏の味方につけば、
どうしようもない。

ただし、小池氏が本当に「五輪中止」を考えているかどうかについては、筆者もいささか懐疑的だ。菅首相の思惑通り、ワクチン接種が7月末までに高齢者分を完了するほどのペースで進み、新規感染者数が減少、医療の逼迫状況も解消されるのなら、世間の気分も変化するだろう。五輪開催ムードへと転換することだってあるのだ。

小池氏も、ギリギリまで判断したくないのが本当のところではないか。まずは緊急事態宣言の期日である5月末に、どのような状況になるかを見極めたいはずである。これからのコロナ情勢しだいでは、小池氏と二階氏の動向を過剰に気にする菅首相周辺の取り越し苦労に終わるかもしれない。

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