誰にでも、人生にはいくつかの「試練」があると言われています。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、京セラの創業者で日本屈指の経営者であるカリスマ経営者、稲盛和夫氏の「試練」に対する心構えについて語ったエピソードを掲載しています。
試練を通じて成長する 稲盛和夫
私は、「試練」とは、一般的にいわれる苦難のことだけを指すのではないと考えています。人間にとって、成功さえも試練なのです。
例えば、仕事で大成功を収め、地位や名声、財産を獲得したとします。人はそれを見て、「なんと素晴らしい人生だろう」とうらやむことでしょう。ところが実は、それさえも天が与えた厳しい「試練」なのです。
成功した結果、地位に驕り、名声に酔い、財に溺れ、努力を怠るようになっていくのか、それとも成功を糧に、さらに気高い目標を掲げ、謙虚に努力を重ねていくのかによって、その後の人生は、天と地ほどに変わってしまうのです。
つまり、天は成功という「試練」を人に与えることによって、その人を試しているのです。いわば人生は、大小様々な苦難や成功の連続であり、そのいずれもが「試練」なのです。
そして、私たちの人生は、その人生で織りなす「試練」を、どのように受け止めるかによって大きく変貌していくのです。
私たちは、苦難あるいは僥倖、そのいずれの「試練」に遭遇しても、決して自らを見失わないようにしなければなりません。つまり、苦難に対しては真正面から立ち向かい、さらに精進を積む。
また成功に対しては謙虚にして驕らず、さらに真摯に努力を重ねる。そのように日々たゆまぬ研鑽に励むことによってのみ、人間は大きく成長していくことができるのです。
私は、現代の混迷した社会を思うとき、私たち一人ひとりが、どのような環境に置かれようとも、自らを磨き、人格を高めようとひたむきに努力し続けることが、一見迂遠に思えても、結局は社会をよりよいものにしていくと信じています。
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