韓国の“中国ヨイショ”にG7首脳が激怒。あえて総スカンの大失態を犯した思惑

 

台湾周辺で続く、中国の「きな臭い」動き

 

これはイメージとしては、まさにフィリピン近海における中国船団の停泊にもつながりますし、南沙諸島および西沙諸島海域で中国が進めた埋め立て人工島の建設とその軍事化とイメージが重なります。

実際の狙いは明確ではないものの、そう想起させることによって、直接的に台湾に心理的圧力をかけつつ、台湾の友人たちに対しては、『台湾は中国と不可分の一つの国であり、あくまでも内政問題』という表向きの主張とともに、『G7やクワッドが何を言おうが、中国共産党は相手にせず、着々と“台湾の領土開放”のために邁進する』という挑戦状とも言えます。

そしてこの馬祖列島海域での緊張の高まりは、意地悪な見方をすれば、中国政府による罠とも理解できます。

一応、この海域は台湾領ですが、中国が主張する九段線という国境の押し付けとともに、

軍備が充実している台湾の沿岸警備隊が、停泊する中国船団に対して何らかの威力行使を行い、偶発的な“事故”が起これば、中国にとっては、喉から手が出るほど欲している台湾攻撃のための口実となり得ます。

そうなったら、中国は台湾の“領土回復・解放”のために、軍事的攻撃に臨む可能性が高まり、それはアメリカ(とクアッド)による軍事的な介入を自動的に引き起こす事態になります。

軍事的な優劣は、諸説ありますが、中国共産党政府としては不可分な領土である台湾“防衛”のために軍事介入することは、1949年の中華人民共和国建国以来、中国共産党のアイデンティティに沿った動きとなり、自己の生存空間の確保という最大の安全保障上の必要性を(特に国内に向けて)強調する絶好の機会を提供することになります。習近平体制および中国共産党にとってはとてもリスキーな賭けになりますが、One Chinaを自らのアイデンティティに掲げる習近平国家主席にとっては避けられない戦いなのだと考えます。

では、本当に米中の武力衝突は起こるのか?

米中「軍事衝突」の可能性はトランプ時代より高まった

個人的にはトランプ大統領時代よりは、その可能性は高まったとみています。

トランプ大統領は中国を煽りに煽りまくりましたが、同時に実利主義の権化のような存在でもあったことから、対立構造を生み出しつつ、中国とは“うまくやってきた”と分析できるかと思います。

しかし、人権問題や自由主義の保護という原理原則を政権のアイデンティティに据えるバイデン政権にとっては、そのアイデンティティへの挑戦は何としても打ち負かす必要がある対象という捉え方をする可能性が高い気がします。

同時にトランプ大統領は軍事産業を優遇する措置を取りましたが、口は立っても戦争はしないというスタンスから、軍事産業に対しては、戦争遂行時にもたらす予定の利益を供与できておらず、それが軍事産業のフラストレーションにもつながっていて、バイデン政権に対して「新しく生産した武器を消費せよ」との圧力がかかっているという話を何度も耳にしています。

中国とは台湾海峡をめぐって6年以内に戦争になる可能性が高いとしたペンタゴン高官の議会証言に加え、対中脅威論が国内世論として根強い中、軍事産業からの圧力と相まって、軍事的な対峙となるのかもしれません。

それを防ぐための防護壁が16日に開催されたオンラインでの拡大ASEAN防衛大臣会合でしょう。

ここでは、“珍しく”日本が音頭を取って、台湾問題を提起し、ASEAN各国の力も借りて、台湾問題が軍事的な衝突に至らないようにとの外交努力をし、クアッドの仲間やニュージーランドから支持を得ています。

ちなみに参加していた中国の国防大臣はスルー、ロシアの防衛大臣も特にコメントなしということでしたが、ここでも謎の働きをしたのが韓国だったようで、結果として拡大ASEANとしての“結論”はでていません。

しかし、この場であえて台湾問題を提起したことで、中国の軍事的な圧力に頭を悩ませており、かつ自国の安全保障への懸念をもつASEAN諸国の注意を惹き、かつ対中警戒レベルを心理的に上げて、対中国警戒態勢で連携したいとの思惑も見えます。

中国が行う外交工作に似て、今回は日本主導での中国とASEANの切り離し工作とも言えるでしょう。

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