心理学者が明かす「カリスマ」の秘密。現代日本に必要な指導者像とは?

 

心理学的に見れば、「素質(遺伝)」と「環境(経験)」は掛け算の関係にあり、いずれか一方がどんなに優れていても、もう一方の条件がゼロであれば、才能が開花することはありません。

実証的な研究の結果を見ると、スポーツであれ勉学であれ、それらを育成する教育環境が整っていると、その能力の「個人差」は大きくなります。なぜかというと、遺伝的な素質のレベルで、どのような能力にも生まれつきの個人差があるため、理想的な育成環境で教育すると、生まれつき優れた素質を持っている子供はずば抜けた能力を発揮しますが、素質の劣った子供ではそれほどの結果は得られません。ですから、能力のバラつきが大きくなるのです。

しかし、どういう能力の素質が優れているかについては個人差があるわけで、数学の成績が最低線でも、音楽の成績はトップクラスということが普通に起こります。ですから、何がその人の「一芸」かは個人によって違うのです。自分の素質的な(生まれつきの)長所に気づき、これを伸ばすことがカリスマ性を身に付けるための第一歩と言えるでしょう。

後は、それが「好き」であることが素質を伸ばす特効薬となります。以前にも申しました通り、「好きこそものの上手なれ」です。欧米などで「オタク」がクールな「カリスマ」と評価されるのも、道理にかなった話です。

【後光効果】

ときどき、偉人伝などの伝記をよく読んでいる人から、「カリスマ的な人は、一芸に優れているだけではなく、総合的に多くの長所を備えているのでは?」という質問を受けることがあります。

もちろん、中には一芸だけではなく、あれやこれや、周りが「神様は不公平だ」と僻(ひが)みたくなるほど、たくさんの美点を併せ持っている人もいないわけではありません。超美人で歌も上手く、実は天才ハッカー、とか…。ただ、多くの人はそんなに何もかも優れた特徴を兼ね備えているわけではありません。実際、詳しく調べてみると、カリスマ性を備えた人ほど、それに倍して「欠点」「短所」を抱えていたりするものです。

たとえば、第35代米国大統領ジョン・F・ケネディー(John Fitzgerald Kennedy 1917~1963)は、強烈なカリスマ性を備えた伝説的指導者で、私にとっても、彼は中学生時代のヒーローでした。彼の就任演説は、ソノシート(塩化ビニールでできた薄手の柔らかい簡易レコード)が刷り切れるまで繰り返し聴いたので、その声は今も頭の中にこだましています。

print
いま読まれてます

  • 心理学者が明かす「カリスマ」の秘密。現代日本に必要な指導者像とは?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け