そんな彼も、日常生活では物を忘れる特技?を持っていて、傘などはしょっちゅう失くしていました。家族も諦めていたようです。それに、あんな素敵なジャクリーンという奥さんがいながら、女性との浮気は絶えなかったのですから、これはかなりの問題です。
昔の東洋なら、「英雄色を好む」ということで大目に見てもらえましたが、ピューリタンの国であるアメリカでは、政治家として致命的な欠点と言えるでしょう。真偽のほどは分かりませんが、女優マリリン・モンローとの恋の噂は、現在でもなお囁き続けられており、彼女の不審な死の原因をJFKの責任だと糾弾する人も少なくありません。
要するに、欠点の無い人物というのはきわめて希で、全ての科目で100点満点を取るような人もまた少ないということです。それなのに、一芸に秀でている人が、それ以外にも多くの長所や美点を備えているかのように私たちが「感じて」しまうのはなぜかというと、そこに「ヘイロー効果(halo effect)」と呼ばれる心理法則が働くからです。
ヘイローというのは神様や仏様の頭の後ろで輝いている「後光」のことです。昔は英語を読み間違えて「ハロー効果」などと呼んでいました。これは、対象を評価する時に生ずる一種の歪み、「認知バイアス」を指す言葉です。
つまり、ある対象が顕著な美点を備えていると、それに対する好意的な印象に引きずられて、他の諸特徴に対する評価もまた好意的な方向へシフトしてしまうという心理現象を指す言葉なのです。要するに、カリスマ的な人物の放つ強烈な「後光」に眼が眩んで、公平な判断ができなくなるというわけです。アイドルはトイレに行かないと熱烈なファンが信じ込んだり、野球の名選手が「会社経営」をテーマとする講演に招かれたりするのも「ヘイロー効果」の結果ではないかと思います。