これ一発で自民“下野”の可能性も。野党が公約として掲げるべき「最終手段」

rp20210622
 

専門家らの提言を無視し、有観客での五輪開催を既定路線とした菅政権。もはや国民の政治不信は高まるばかりですが、このような状況を識者はどう見るのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、今のままでは日本経済の低迷を招いた「ロッキード政局」の二の舞になりかねないと分析。そこから脱却するためには荒療治が必要とし、「東京五輪のケジメ監査」のための管理内閣構想を提案しています。

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かつての「ロッキード政局」を参考に「五輪政局」を考える

偶然ですが、本メルマガでは「フラッシュバック」というコラムで、45年前の同月同週の歴史を回顧するという作業をずっと続けています。現在扱っているのは、1976年6月、ちょうどロッキード事件が大きな問題になる一方で、自民党内では「三木おろし」に対して「三木ねばり」が対抗するという奇妙な状況が続いていました。

どうして自民党内で、自分たちの総理を引きずり下ろしたいという勢力が出てきたのかというと、三木政権が続くと「ロッキード事件でカネを受け取っている政府高官」についての捜査が進捗した場合に、「指揮権発動をしない」つまり「田中角栄を逮捕してしまう」という「危険」があったからです。これを阻止すべく、椎名悦三郎をリーダーとして、そこに田中派、福田派、大平派という保守3派が結集していたのでした。

では、三木は国民的人気を獲得していたのかというと、そうではありませんでした。三木のイメージは崩れていませんでしたが、三木という人は自民党の総裁であり、自民党として選挙を戦えば敗北は目に見えていたからです。そんな中では、自民党内ではこのまま三木に解散をさせると、保守派は議席を減らして権力を失い、残った三木派などが中道勢力と組んで連立政権を作るなど、ロクなことにはならないとして、警戒感を高めていたのです。

単純化して言えば、民意は自民党を見放していました。では、野党はどうかというと、民社という不思議な中道右派政党があり、この頃の公明は「都市型の革新勢力」を自認していましたが、この両党は合わせて50議席にも満たない中でそれほど大きな力は持っていませんでした。

これに対して野党第一党の社会党は直前の72年の総選挙では118議席(得票率22%)、共産党は38議席(10.5%)という大きな勢力を有していました。ですが、今でいう「リベラル」な勢力は社会党の右派に少しいるだけで、残りの社会党と共産党は、「利潤追求を前提とする自由経済」を否定しているばかりか、公然とではないにしても「政権を取ったら自由陣営を抜けて東側同盟に変わる」姿勢を見せていたのです。

何しろ、核兵器は良くないが東側の核は人民の核だから正義だとか、プロレタリアート独裁、つまり革命の過程で社会主義国が民主主義を停止して強権に移行することが正しいなどということを、「実行不可能なことは分かっていながら、より左派のポジションを取ると格好良いし、組合活動に気合が入る」というだけで主張し続け、これに対して政権の受け皿になるべく「現実に目を向ける」勢力は、「右傾化」だとして犯罪者呼ばわりしていたのでした。

そんな中では、有権者としては野党に対して「チェック・アンド・バランス」の機能は期待しても、政権交代の受け皿は期待できるはずがありません。実際に、この1976年の任期満了衆院選では、自民党は大敗したものの、保守系無所属を入れて過半数を維持し、与野党の政権交代は起きませんでした。

ですが、これから15年にわたって政治は混迷を続け、中曽根の5年間というのはあったものの、一貫して「政治不信」という魔術的な言葉が、あるときは政界を縛り、あるときは何かに結集しという形で、例えば「新自由クラブのブーム」や「土井たか子ブーム」があったりしたわけです。結果的に、1993年には細川内閣の発足という形で、自民党政権が一旦終焉を迎え、また1994年には村山内閣という形で自民党は政権復帰するわけですが、政治的には不安定な時代が続きました。

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