これ一発で自民“下野”の可能性も。野党が公約として掲げるべき「最終手段」

 

今から思えば、1975年以降の政治の混迷というのが、国家の方向性を曖昧にし、産業構造改革を不可能にし、以降の日本経済の低迷を招いたとも言えます。つまり、世論と政治の相互不信と言う現象です。

この点において、現在の政局にはある種の類似が見られます。五輪政局とでも言っていい状況があり、とにかく有観客開催に走る政権に対しては、不信任が拡大しています。その一方で、野党には維新と都民ファという都市型保守政党(小さな政府論)と、都民ファに近い国民民主党、そして立憲民主党があり、イデオロギーはバラバラ、官公労との関係は正反対、そのくせポピュリズム的な姿勢では一緒で、人気獲得合戦ではライバル関係という妙な関係にあります。

そんな中では、結局のところ野党が連合しても統治ということでは実務は回らないし、方針も一本化できないのは目に見えています。つまり、自公政権からすると、敵失が大きいので、民意から離れた政策ができてしまうという、異常な状態があるとも言えます。

問題は五輪です。このまま有観客で開催され、仮に大失敗となれば、菅内閣は退陣して看板を変えての総選挙となるかもしれません。その一方で、大失敗ではない、感染はあったが、感染爆発でもないというような曖昧な結果になったとすれば、投票率は低迷して一種の消化不良な政治不信が、世論の奥底に溜まっていくように思います。

その一方で、日本の場合は今でもワクチン懐疑派が、かなりの多数を占めており、感染の終息もそう簡単には見通せない現状があります。あくまでワクチンを前提の経済再開を目指す自民党政権に対して、仮に野党がワクチン懐疑の感情論を結集して対抗するようなことになれば、経済社会の低迷が続くことになります。

また、2030年には札幌で冬季五輪の開催招致という計画がありますが、このまま漠然とした「アンチ五輪感情」が根を張ってしまうと、結果的に招致断念ということになる可能性があります。北海道の政局というのは、意外と複雑で、そうした結論が出てくる可能性は十分にあるのです。そうなれば、せっかく巨費を投じて北海道新幹線の札幌延伸をやり、しかも万難を排して東京=札幌の4時間台運転を実現しても、北海道経済の再生は難しくなり、衰退が加速するかもしれません。

そんな中で、一つの提案があります。

それは、野党が「ワン・フレーズ」で結集するということです。それは、東京オリパラの「ケジメ」をつけるという公約です。

外交、軍事、経済財政などについての違いについては、この際、一切の合意や調整を諦めて、とにかく「五輪のケジメ」という1点を政策協定として合意して、総選挙に臨むのです。

ケジメというのは、3点です。1つは、コロナ感染対策において、オリパラ開催を優先して法令やガイドラインを歪曲したり、違反したケースについて徹底的に検査、報告を行うということです。2つ目は、同じく、オリパラに要した費用について、徹底的にガラス張りとして監査を行い、仮に浪費や公私混同があれば法律の範囲で摘発するだけでなく、可能な限り公表するということです。3つ目は、招致に要した費用について改めてガラス張りの監査を行なって、その結果を公表するということです。

この3点に関して、刑事告発も辞さない姿勢で臨み、最悪の場合でも公表を行うということ、すなわち「ワン・フレーズ」の公約を掲げて、与党と対決するのです。

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