カネ漬けで“中国依存症”国家を量産。習近平「武力を使わぬ」覇権拡大

 

世界は真剣に中国との付き合い方および距離感を測らなければならない状況に

そして何よりも、今では経済力で凌駕してしまったかつての超大国ロシアを飲み込もうとしています。しかし、ロシアはまだ、世界における2大核戦力の一翼を占めています。これまでの冷戦期も含めた75年間は、核抑止の理念に基づいて、核戦争に発展することがないように様々なやり取りが行われてきました。

しかし、その枠組みにいない中国が日に日に核戦力を含めた総合力を高める中、バイデン大統領のアメリカとプーチン大統領のロシアの間で話し合われるSTART IIの延長が、実際の核戦力および戦略的な戦力のバランス状態を意味しないことは明らかです。

今後、中国を3つ目の柱として、戦略的核兵器・戦力の国際的なバランスの枠組みに入れて、互いに監視しあうシステムを確立しない限り、抑止論(deterrence)は机上の空論になり、今後、結論が予測できないような戦禍に導かれていく危険性をはらみます。

「一つの誤解・誤報が、世界全体を決して戻ることができない状態へ導く」

それをネガティブな意味で可能にする国が、これまでの2か国から3か国に増えた際、その分、相互抑止力とデリケートなコントロール・バランスの維持は限りなく困難な課題になるでしょう。

2021年時点での中国のステータスは、様々な表に出ていないclassified情報も含めて分析すると、まだアメリカと肩を並べるような総合力は持ち合わせていないとみています。

しかし、軍拡に待ったをかけてそのスピードを落とす方向に進むバイデン大統領のアメリカと、豊富なオイルマネーで最新鋭の兵器を開発することをためらわないロシア、そして、国際社会で無視できない勢力になっているが、国内での真の出来事は決して明かさない中国政府が進める軍事的な拡大と近代化を急ピッチで進め、予定していたよりもはるかに早くアメリカと肩を並べる超大国になろうとする習近平の戦略が並立する現状は、このままでは持続不可能な状況へと導かれるような気がしてなりません。

コロナを機に、第2次世界大戦後から続いた旧国際秩序は崩れたとする見方が強くなる中、アフターコロナの時代に築かれ始めている新国際秩序の中心には、良くも悪くも強い中国が存在することになるでしょう。

もちろん、現在の中国政府の政策と戦略が実際には持続可能な、現実的な路線かどうかは、また別の評価が必要になりますが、若干の修正がなされるにせよ、世界はまじめに中国との付き合い方および距離感を測らないといけない状況になるものと考えます。

とはいえ、私個人としては、中国にはどこかまだ“自らが作り出したスピードについていけず、脱線する可能性“を否定できずにいるのですが…。

いろいろとご批判やコメントもあるかと思いますが、ぜひ皆さんのお考えもお聞かせいただければ嬉しいです。

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