カネ漬けで“中国依存症”国家を量産。習近平「武力を使わぬ」覇権拡大

 

欧米の手薄な地域を次々と赤く染める中国

中国は、アメリカや欧州各国、そして日本などと、実際に戦争をすることなく、代わりに政治・経済・外交・情報力と軍事的なプレゼンスを包括的に用いることで、国際社会における支持基盤を拡大しています。

ゆえに、アメリカをはじめ欧州各国は、中国封じ込めのために経済制裁を課すという手段を通じて、中国の拡大を防ごうとしていますが、実際にはあまり中国には効いていないという実情に繋がってしまいます。

私もその傾向がありますが、米中の軍事的な対峙、特にアジア太平洋地域における緊張の高まりにばかり目が行って、「これは戦争へ向けた動きだ」と大騒ぎしがちですが、中国には覚悟と準備はあるようですが、実際には対米戦争は、自身の生存を脅かすようなケース以外では想定していないようです。

代わりに、経済力、ハイテク技術と戦略物資の供給、サイバー能力といった戦略的な経済・情報エリアでの能力を高めて、世界経済における影響力を高めつつ、抑止力として宇宙戦略や武器、特に弾道ミサイルの命中精度の向上、AIの軍事部門への転用、核戦力の充実などのハードコアな戦略も、アジア太平洋地域限定で行っています。

とはいえ、軍事技術についても、着々と能力は向上していますので、2030年代までアメリカなどとの戦争がなければ、どのような姿になるかはわかりませんが。

戦略的には、中国の軍事面でのアジア集中が功を奏しているかもしれません。

オバマ政権以降のアジアシフトは、確かにアジアを舞台にした米中の対峙をエスカレートさせていますが、それが中国にアジアの外での覇権拡大の道を開き、各国の本心は別にして、確実に国際社会における中国票を積み上げていますし、発展に飢える中国国民と国営企業、金融(中国元)とチャイナマネーの行き先を作っているとも見ることが出来ます。

それが各地でチャイナ権益を増やし、軍港や空港、高速道路といった戦略的なインフラ建設を次々とこなす中、中長期的には、中国の軍事・経済・政治・外交・価値観を統合した影響力拡大につながるベースを構築していると言えます。

アメリカとのその仲間たちが、台湾・香港という中国にとって“不可分の権益”での動向に向き、対中圧力を加える中、南シナ海周辺における支持取りのゲームを進めているように見えます。

このメルマガでもお話ししているように、南シナ海周辺、つまりASEANの国々は、時にはアメリカや欧州、日本のサイドに立ち、中国が強める圧力に抗するために、それらの国々の傘に入り、同時に経済的なつながりも強化しますが、地理的にどうしても隣接する中国の否めない経済力と影響力を上手に使って、自国及び地域の発展のブースターに用いるという周到さを持っています。

以前、中国政府の高官に話を聞いた際、中国は中長期的な世界戦略の進め方をASEANでテストしているのだとか。軍事的な圧力を増大させて領土的な野心を満たすと同時に、経済的な恩恵を感じさせて、抜けることが出来ない依存体制に組み込んでいくのだとか。

今、その世界戦略が、南シナ海周辺はもちろんのことながら、中東・東アフリカ、そして北アフリカにまで及び、アジアに集中しがちな欧米の手薄なところで次々とオセロのコマをひっくり返すように、勢力圏を赤く染めているように見えます。

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