タリバンは本当に“悪”なのか?大国の意志に翻弄されたアフガンの真実

 

「もともと我々はアフガニスタンの国づくりをしようとしていたのではない」「アメリカとその同盟国は、十分にその役割を果たした」「アメリカとその同盟国に対するテロの脅威がなくなった今、アフガニスタンの地に軍を駐留させる必要性はない」と述べて、8月末までの撤退を発表し、その計画は不変だと言い放ったバイデン大統領。

そして、カブール陥落を受けて「軍隊を持っているにもかかわらず、自国を守ろうとする意思がない軍事組織に、アメリカがコミットすることはあり得ない」と、まさに責任逃れとも言える発言まで繰り出しました。

先週号でも触れましたが、思いの外、迅速に徹底的に全土掌握に向けて攻勢をかけたタリバンの勢いが止まらず、おそらく近々、アフガニスタン政府にとどめを刺すだろうと感じたのか、アメリカ政府は【かつてのタリバンではない】【アメリカに対してのテロ攻撃に加担しないとの言質を得た】と、カタールに赴いてタリバンの幹部との会談を行いました。

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推測にすぎないと断っておきますが、その場で、タリバンによるアフガニスタン支配と統治をアメリカは“容認”したと思われます。一応、政府を支援してきた体裁を保つために“限定的な空爆や攻撃を加える“という内容まで、タリバンサイドと合意していたのではないかと思われる情報が洩れてきています。

そのせいでしょうか。今になってバイデン政権は、国際的な批判に直面していることを危惧し、「アメリカ人をアフガニスタンから脱出させる必要がある」と言及したうえで、8月31日の撤退期限の延長の可能性に触れだしました。

これはただの茶番なのか。それとも同盟国などからの批判を受けて、最後の責任を果たそうとしているのでしょうか?とはいえ、同盟国の国民の保護まではコミットしてくれないようですが。

あくまでも国際社会でのsaving faceの言い訳であることに気づいているのか。それともそれでさえも事前に同意済みなのかは知りませんが、タリバン勢力は一気にアフガニスタンの権力を手中に収め、カブール陥落時に、国際社会に向けて発した数々のリップサービスともいえる約束を、すでに反故にしてきています。

「タリバンが統治する新国家には民主制などという概念は存在せず、厳格なイスラム法による統治をおこなう」
「アフガニスタンには民主主義の土台が存在しない」
「女性の教育の権利や就業の権利を奪うことはないが、それはあくまでも、イスラム法の考え方に基づく形式を重んじるならば、という条件付き」
「国名はイスラム首長国とし、各地域の盟主と宗教指導者による統治形式をとる」

様々な発言がこの数日、タリバン幹部により公表されており、次第に国家デザインが示されていますが、20年前までのタリバンによる統治(1996年から2001年)から何が変わったのだろうか?と疑問を抱く状況です。

それはカブールにいる人たちも同じようで、タリバンによる融和案には懐疑的で、先の見えない不安に晒されています。

とはいえ、“通常”の生活が再開されたアフガニスタンでは、懸念に反して、女子生徒の通学もこれまで通りに行われ、女性の就業も継続されていることで、内戦の勃発の危険性が後退し、権力の移譲は思いの外、スムーズに進むとの見方も出てきているようです。

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