多くの猫と飼い主を悩ます腎臓病。腎不全は年老いた猫の死因の1位と言われています。メルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』著者で米国在住医学博士のしんコロさんが飼うティッティの腎臓も20%ほどしか機能していないのだそう。今回のメルマガでは、猫の腎臓病に対するアメリカでの最新の治療法についての質問に答え、目的別に使用されている薬について説明し、東大の研究から始まった「AIM製剤」への期待を示しています。
猫の死因に多い「腎不全」。アメリカの最新治療法は?
Question
猫、とくに高齢の猫には腎臓病が多く、残念なことに猫の死因の一つが腎不全だと聞いていますが、最近は良い薬の処方が進んでいるというニュースがあります。
例えば、フォルテコールとセミントラとラプロスという3種の薬ですが、アメリカでは、使用されているようでしょうか。また、アメリカでの猫の慢性腎臓疾患は治癒の見込みがあるものになってきているのでしょうか。
しんコロさんからの回答
おっしゃるとおり、腎不全は高齢の猫によく見られる病気です。遺伝的に猫は腎臓に組織ゴミ(デブリ)が溜まった時にそれを掃除するメカニズムがうまく動かないのです。このメカニズムを解明した東大のグループが新薬の開発を進めてきているのは最近のことですが、コロナの影響で進行が遅れているということも耳にしました。
腎臓という臓器は悪くなるとなかなか良くなることがありません。アメリカでもその概念は同じで「一旦悪くなるとそのまま悪くなりつづける」というのが特徴です。一方で「腎臓は100%完璧でなくても大丈夫」という特徴があります。ティッティの腎臓は20%ほどがまだ機能しており、その機能を保てれば長生きでもできるしQOLも落とさずに暮らしていけます。なので、腎疾患に関しては「残っている腎機能をいかにダメージを与えずに保つか」が大切になります。
さて、腎臓疾患には目的によっていくつかの薬が使われます。フォルテコールやセミントラは欧米で開発されたこともあり、フォルテコールは腎疾患に、セミントラは高血圧に獣医でも使われることがあるようです。ラプロスは日本発だったと思うので、海外の獣医で実際に使われているという例はあまり目にしたことがありません。臨床試験などには用いられていると思います。
さて、猫に限らず、腎疾患は非常に治療が難しいのが現実です。人間にも全身性エリテマトーデスやそれに伴うループス腎炎などがありますが、これといった治療薬がありません。僕自身、腎疾患を含めた自己免疫疾患の新薬の開発をまさに行っているところです。そこには多くの難題と同時に、期待や希望も感じられます。
まずは人間の腎不全に用いることができる新薬ができれば、後々動物にも応用されることになるでしょう。同時に、東大の研究からスピンオフしたベンチャーが開発している「AIM製剤」には期待を寄せています。
● 腎臓の働きを改善する遺伝子「AIM」でネコの寿命が2倍に!? | 広報誌「淡青」37号より | 東京大学
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