ところが調べてみるとすべてしっかりと収納されていて、音の発生源ではありません。しかし他に思い当たるものが無く、「とにかく不気味だ。音の発生源を突き止めて対処しなくては」という焦りを抱えながら数日が過ぎて行きました。
ハルに何かが直接当たっているのは間違いないんですが、音が船室全体に満ちているために、発生源が分からないんです。いくら耳を澄ませても、どこから音がするのか方向が分かりません。これはかなり不気味で不安です。
こうして数日が過ぎたんですが、コックピットにいる時にハタと気が付きました。重量物でハルに直接触れる可能性があるのは、既に確認を済ませている錨とバッテリー以外では、コックピット外側の右舷デッキ下に収納してあるプロパンガスボンベがあります。これではないのか?
そう気が付いて、コックピットから命綱を付けてデッキに出てプロパンガスボンベ収納ロッカーを開けると、二基のプロパンガスボンベを縛っていたショックコード(ゴムロープ)が劣化しており、船体がローリングするたびに片方のプロパンガスボンベが船体に当たっています。
これを見つけた時には音の原因が分かってかなり嬉しく、すぐに雑巾などをボンベの隙間に詰め込んでボンベがロッカーの中で動かないように対処したんですが、対処が終わって、ひしひしと恐ろしさがこみあげて来ました。
このプロパンガスボンベ、5キロのボンベが二つ並んでいて、一つは既に空でした。出航時にはこのボンベを使って料理をしていたんですが、一つが空になったのを期に使用を中止したんです。
というのは、このころには船に持ち込んだ生鮮食品が尽きていて、基本的にお湯を沸かす以外の料理をしなくなったので、お湯を沸かすだけならはるかに早くて効率のいい「ジェットボイル」というキャンプ道具を使う事にして、プロパンガスのコンロの使用を中止したんですね。
この「ジェットボイル」は「ウエークアップ!」の番組プロデューサーから出航前に贈られたものです。プロパンガスの使用を中止する前、一応、空になったボンベからもう一基の満タンのボンベにガス管を接続し直したんですが、接続した後で「どうせ使わないなら」と、ボンベの元栓自体をしっかりと閉じていました。これが結果的に大正解でした。
というのはーー(『辛坊治郎メールマガジン』2021年9月17日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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image by: 辛坊氏提供