国連安全保障理事会は15日午後(日本時間16日午前)、北朝鮮による短距離弾道ミサイル発射を受け、非公開の緊急会合を開いたが、安保理としての声明を出すには至らず、北朝鮮のミサイル開発を抑制する強いメッセージを国際社会が一致して打ち出すことはできなかった。
おりしも韓国では、この15日に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験が行われ、3,000トン級潜水艦から発射したSLBMを目標に命中させた日でもあった。朝鮮中央通信によると、北朝鮮の国防科学院の張昌河(チャン・チャンハ)院長は20日、韓国が15日に試射したSLBMについて「水中武器とは程遠い、形も整っていない不十分な武器に見えた」と分析した文章を発表した。北朝鮮が韓国のSLBM発射実験直前に短距離弾道ミサイルの発射訓練を行っており、韓国のSLBM開発への牽制(けんせい)であったとの見方もある。
この2日後の22日に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は国連総会で、「終戦宣言」に言及したが、北朝鮮のミサイル発射には言及しなかった。韓国が最も北朝鮮からのミサイル攻撃の標的となっているにもかかわらず、この大統領は、北朝鮮の核・ミサイル開発には傍観を決め込んでいる。金与正(キム・ヨジョン)氏は、珍しくこの大統領発言を罵(ののし)るどころか「終戦宣言といった問題を意義のある形で解決する機会を与えてやる」との談話を発表したというが、内心はほくそ笑んでいるだろう。
北朝鮮は28日朝に、慈江道から日本海に向け、新型とみられる短距離ミサイル一発を発射したが、極超音速ミサイルとみられ、従来のミサイル防衛網では迎撃が困難とされている。さらにその2日後の30日に、北朝鮮の朝鮮中央通信が、同国の国防科学院が新たに開発した「対空ミサイルの発射実験を行った」と10月1日に報じた。9月だけで4回のミサイル発射である。
この10月1日は、韓国の「国軍の日」にあたり、文在寅大統領は記念式典で演説し、自国の国防力の増強について強調しながらも、北朝鮮のミサイルに関しては、またもや触れなかった。万事休すである。日本国民は北朝鮮の核・ミサイル攻勢にただ慄(おおの)いているだけにはいかないだろう。岸田文雄新総理はどのように対処するのか期待するのみである。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)
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image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト