甘利氏は岸田陣営の選対に顧問として入った。総裁選が告示されて二日後の9月19日、甘利氏は次のようにツイートした。
私が交渉をまとめたTPPはその後の貿易協定のひな型になりました。これをベースにどの国とも締結が可能です。日.EU通商協定で大臣間合意が結ばれた直後にベルギーにいる岸田外相から私の携帯に電話が入りました「たった今、大臣間署名が出来ました、お陰様です」永田町には珍しい程の思いやりの人です。
— 甘利 明 (@Akira_Amari) September 19, 2021
私が交渉をまとめたTPPはその後の貿易協定のひな型になりました。これをベースにどの国とも締結が可能です。日.EU通商協定で大臣間合意が結ばれた直後にベルギーにいる岸田外相から私の携帯に電話が入りました「たった今、大臣間署名が出来ました、お陰様です」永田町には珍しい程の思いやりの人です。
岸田氏の人柄は誰でも知っている。政局を見て、甘利氏が急にすり寄った感は否めない。このころには、岸田氏を総理にして、あわよくば幹事長、という考えがちらついていたのではないか。
高市早苗氏の選対は、安倍氏が全面支援し、掌握している。甘利氏は安倍氏、麻生氏と緊密に連絡をとれる立場だ。岸田氏が甘利氏に頼らざるを得ない構図であることを百も承知のうえ、岸田陣営にもぐりこみ、自在に動きまわったのが甘利氏だ。
岸田、高市両陣営の幹部が9月28日夜、決選投票で岸田氏と高市氏のどちらかが河野氏と対決することになった場合、両陣営が協力することで合意した。むろん、甘利氏の根回しがあったから、まとまった話だ。事実、甘利氏はその前日、安倍氏、麻生氏と個別に会談している。
【関連】安倍・麻生というゾンビに取り憑かれた自民党・岸田新政権の前途多難
表舞台に舞い戻った甘利氏は、これからが、イバラの道だ。幹事長ともなると、逃げるわけにはいかない。野党から疑惑追及が蒸し返され、報道が再過熱するのは必定だ。
ただ甘利氏は、どんな疑惑もウソで乗り切ってきた安倍元首相の方法を学んでいる。ひたすらシラを切っていればなんとかなると高をくくっている。岸田首相はよほど注意しておかないと、“闇将軍”に操られる事態にもなりかねない。
岸田首相の軍師のようでありながら、安倍氏、麻生氏とも通じている。これが甘利氏の強みであり、岸田氏が頼りにするゆえんではあるが、裏を返せば、いつなんどき岸田氏を裏切って安倍氏らのもとに走らないとも限らない、ということだ。どこまで甘利氏を信頼するべきか、いまだ手探り状態でもあるのではないだろうか。
むろん、岸田首相とてさるもの。優しい物腰に似合わぬしたたかさものぞかせている。安倍氏が官房長官に推すのを振り切って萩生田光一文科相を経産相に横滑りさせ、古川禎久氏に石破派を退会させたうえで法務相に抜擢した。このあたりは、安倍傀儡政権とは言わせないぞという意地のようなものが見て取れる。
それでも、アベ・スガ政治から脱却できるかというと、はなはだ心もとない。「新自由主義からの転換」を唱えながら、アベノミクスの継続について曖昧姿勢なのは、何がしかの忖度を働かせているせいではないか。
岸田首相は、甘利幹事長に対し自身の疑惑について説明を尽くすよう促すとともに、安倍元首相のモリ・カケ・サクラ問題についても、新政権としてきちんとした調査を進め、国民の疑念を晴らすべきである。さもなければ、間違いなく政権運営に苦労し、下手をすれば短命政権の道をたどることになろう。
国家権力と偏向メディアの歪みに挑む社会派、新 恭さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ
image by: Twitter(@Akira_Amari)