なぜ君たちは選挙区で負けたのか。甘利と平井「自画自賛」兄弟分の末路

 

甘利氏は応援の予定をキャンセルし10月28日から3日間、タスキをかけ地元に張りついて自身の選挙戦に全力を振り絞った。

しかし、焦りの先には落とし穴がある。10月29日の街頭演説には耳を疑った。

「私はこの日本をしっかり率いて行っているという自負があります。私がいなければ日本が立ち行かないという自負だってあります。でもそれを共有しているのはごく一部の人です。経済界は全員わかってますよ。関係官界もみんなわかってますよ。アカデミア、優秀な教授陣は全部わかってますよ。でも世の中の人はほとんどがわかっていないんです」

自分がいないと、岸田政権どころか、日本がダメになる。それを、経済界や官僚、識者はわかっているが、世の中の人はわかっていない、というのだ。これほど驚異的な自己礼賛のできる政治家がかつていただろうか。

甘利氏がTPP交渉で活躍したことや、知財、半導体といった分野に強いことは評価したい。しかし、金銭疑惑を解消するための説明もしないで、世の中に駄々をこねるのは、まことに見苦しい。

だいたい、上から目線で「一票を」とお願いされても、素直にOKというわけにはいかないではないか。ネット映像で客観的にながめている我々からみれば、彼の演説や発言はマズイと思えるのだが、自信過剰ゆえの視野狭窄に陥っている甘利氏には人心が見えないのだろう。

甘利氏が幹事長として応援に入った最後の候補者が、香川一区の平井卓也氏だった。キャンセルするわけにはいかないほど注目度の高い激戦区だ。

なにしろ、平井氏の対立候補は、大島新監督のドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』で、全国的に話題になった立憲民主党の小川淳也氏である。

平井氏は初代デジタル大臣として、デジタル庁発足に尽力した実績があるとはいえ、「オリパラアプリ」の事業費削減をめぐりNEC会長を「脅しておいた方がいい」と幹部職員に指示したり、NTT社長から接待を受けるなど、週刊誌や新聞のネタになる言動がなにかと多い。

筆者は選挙期間中、TwitterやYouTubeで、平井氏と、対立候補である小川淳也氏の動向をつぶさに追ってきた。

10月27日、高松市内の街頭演説で、甘利氏は平井氏との間柄をこう語った。

「政界における私と平井卓也さんの関係は兄貴分と弟分。そして、デジタルとアナログ。この関係があるから不可能が可能になった」

なるほど二人はよく似ている。平井氏が繰り返したのは、以下のような演説だった。

「誰が既得権益と戦っているのかを1人1人の目で確認していただきたい。私は時代を打ち破るために政治生命をかけて戦ってきた。国民のために命がけで新しい時代の扉をこじ開ける。そこに政治生命を賭けてきた。私は改革の司令塔をつくった人間です」

自画自賛の度合いが半端じゃないのである。自分は省庁の縦割りを打破して、デジタル庁の創設に邁進してきた。小川淳也氏からは、既得権益を守る世襲議員と決めつけられているが、自分こそが既得権益と戦っているんだと主張してはばからない。

誰の作か定かではないが、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という有名な句がある。甘利氏と平井氏は全くそのような精神を持ち合わせないようである。

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