学校という“ブラック企業”を炙り出した「教師のバトン」の大炎上

 

現場の悲痛な声

なぜなら、どこの誰が「ブラック企業」に試験まで受けて就職したいと思うだろうか。

実際に「教師のバトン」のツイートには、「残業代や手当がない」「土日祝日は返上」「(教師になって)精神を病んでしまった」などのツイートが大量に投稿された。

仕事の上でのパフォーマンスを保つには、適度な休憩や休息は必要なはずだ。そうしたことが、許されずにまかり通り、結果として、この状況を「ブラック企業」並みと評価されるに至ったわけだ。

教職を目指す人に向けて、「教師のバトン」で投稿されたツイートを見れば、そのほとんどが、「やめた方がいい」であったわけだから、現場の悲壮感はとんでもない熱量なのだとも言える。

教師のバトンは働き方改革に変えるがよし

「教師のバトン」を簡易に分析してみても、投稿者の多くは現役教員である可能性が高いということがわかる。そこから言えることは、主に呟かれている言葉は、「働き方改革」をしてくれという悲痛な声と捉えるべきだろう。

例えば、残業代や手当など、これは法律改正が必要なところだが、世界のGDP比較の教育費では、日本は世界平均を大きく下回ることから、世界では教育に充てられる予算が低いことでも知られているわけだがから、予算を取りに行く必要があるだろう。

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予算の増加があれば、未経験の分野の部活動の顧問というのは、プロのコーチを雇うこともできよう。まあ、教育活動の一環として考えると、勝ち負けがある競技は議論の対象にもなるだろうが、なにせ、予算があまりに乏しいというのが、教育界隈の実態ともいえるのだ。

もしも、教師のバトンを別の意味でのちのち成功と言うのであるとすれば、現役教師からのバトンは、次世代の教職を目指す学生などにバトンが渡ったのではなく、文科省や国、地方自治体に対して、そのバトンが渡ったのだと当事者が捉えて、中小企業の社長が現場の問題点を次々に改善していくようないわゆる改革につながったときだと言えよう。

実際、いじめの現場にいれば、各地方自治体が第三者委員会を形成するための予算には格差がある。ある地方では、委員一人に3,000円程度の日当、ある地域は大盤振る舞いだと豪語してだいたい1万5,000円程度であった。第三者委員会は事案の複雑性の問題などがあり、10回未満の会合で終わる場合もあれば、20回以上やる場合もある。いずれにしても、自治体の予算としてわずか数十万円払うこともできないという地域もある ということだ。

専門性がある委員はいずれも会合の日当だけで、会合以外で箱一杯の資料を読み込む時間などは日当換算されないのが常である。

一方、その結果は検証されることは稀で、丸数十日かけて作った地域のいじめ対策の提案は使われないまま、単なる通過儀礼になることの方が多いと考えれば、委員を断る専門家も多くなるわけだ。

また、私はいじめの実態などを伝えるための講演会の依頼を受けて全国各地へ行くことがあるが、遠方だとどうしても新幹線や飛行機を利用することになる。すべて格安チケットを入手して動くことになるが、それでも、4校合同で開かないと交通費も出ないということもある。こういう場合、講師料はほぼ無しになるが、呼んで頂けるだけありがたいので、日程があれば必ず行くようにしている。90分間の公園で数百万かかる人気講師ならばいざ知れずだが、私とてこれが毎日ということになれば、生活が立ち行かなくため、断ることになるだろう。

つまり、地方であれ、国であれ、何にしても教育で計上される予算は、求められていることからすれば常に低いというのが、全ての実態だと言えよう。

ただ、全ては悲観的とはいえない。

実際に、私が知り得る限りでも、部活動の予算は国家予算と比べれば、僅かではあるが、「教師のバトン」の悲痛な声と部活を頑張りたい子どもたちの声が国に届いて、枠が設けられたりしている。僅かな変化は、何も変わらないより大きな一歩ではあるのだ。

いっそのこと、「教師のバトン」は、本格的な「働き方改革の一環」に仕切り直してみてはどうだろう。

誰かの犠牲で成り立つ教育現場で、しっかりとした教育ができるわけがないのだから。

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