住民のためにあらず。「道州制」を主張する政治家は信用できない

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先の総選挙で躍進した日本維新の会が掲げる基本方針の第2項には、中央集権と東京一極集中を打破する「道州制の実現」が謳われています。これに対し、道州制を主張する政治家を信用しないと語るのは、メルマガ『佐高信の筆刀両断』著者で評論家の佐高信さん。東日本大震災では、平成の大合併に与せず、旧来の市町村のままだった自治体の支援がスムーズだったことや、小さいものを切り捨てる銀行の合併のように「大きいことがいいことではない」との反論を、住基ネットや道州制に反対する福島県矢祭町の根本良一元町長の言葉を紹介しながら展開しています。

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維新が目指す道州制

関西のある財界人が、橋下徹がねらっているのは、「大統領型の権力をもつ州首相」ではないかと言ったという。大阪市を廃止し、4つの特別区に再編する大阪都構想は、道州制への一里塚だった。維新は福井県を含む現行7府県を束ねる関西州の実現をめざし、そのトップにすわろうとしているのだとか。

私は道州制を主張する政治家を信用していない。「大きいことはいいことではない」からだ。東日本大震災の時、平成の大合併に応じず、旧来の市町村が残ったところほど、救済がスムーズに行われたという。大きくなると、職員も顔見知りではなくなるから、援助物資なども簡単には手渡せない。合併は住民のためではないのである。

私は道州制は電力会社が原発推進のためにやっているのではないかと思っている。たとえば、原発反対の住民投票となった場合、道州制では反対の意見は薄まってしまう。

住基ネット反対で有名になった福島県矢祭町の町長、根本良一は『財界ふくしま』の2007年5月号に掲載された私との対談で、「やはり、道州制は小泉(純一郎)改革の延長線にありますよ。いまは民主党が一番強く叫んでいますね。あのあたりは直してもらわないと応援のしがいがない」と言っている。民主党の後進の立憲民主党にも道州制賛成論者が多いのだろうか。それでは自民党と違わなくなる。

道州制は銀行合併と同じで、小さいものの切り捨てなのである。根本はそれをこう指弾していた。
「私は今日の経済不況のA級戦犯の1つは、大銀行だと思っています。地方銀行や信用組合や相互銀行などは歯を食いしばってやってきた。土地だって大銀行同士がドッジボールで投げ合って、担保価値を大きくしていった。それが土地神話であり、バブルですよ。私は金融機関の本質は臆病であればあるほど正しいと考えていたのですが、それがなくなってしまいました」

傑作だったのは根本の次の打ち明け話である。根本が5期目を終えた時に、町村会の事務局長から当時の助役に電話が来て、「5期終わった人は総務大臣表彰になるが、根本さんは推薦しない。その理由が聞きたかったら総務省の理事が2人いるから電話をかけろ」と言う。しかし、そもそも根本はそれを受ける気持ちがないのである。来ても断るし、「なぜ、表彰しない」と聞く気もない。多分、向こうは電話を待っていたのだろうが、根本はしばらく笑いが止まらなかったという。

根本が尊敬する元外相の伊東正義も勲章拒否だった。グリーン車にも乗らず、「ここがいいのだよ」と言って自由席にすわっている。根本もそうで、グリーン車に乗っている福島の代議士は通り過ぎる根本を見ると、新聞で顔を隠したりしていたとか。道州制は大前研一なども主張していた。

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