中国がGDP世界第2位の自国を「まだ発展途上国だ」と主張する根拠

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ごく近い将来にアメリカを抜いてGDP世界第1位の経済大国になるとも言われる中国ですが、彼らは発展途上国という「地位」を手放すつもりはないようです。今回のメルマガ『黄文葦の日中楽話』では、2000年に来日し現在は日本に帰化されている中国出身の作家・黄文葦さんが、中国が自国を発展途上国であると主張する根拠を列挙。その上で日中両国に対する、厳しくも真摯な提言を記しています。

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中国は開発途上国を卒業したくない?

欧州連合(EU)、英国、カナダなど32カ国が、12月から中国を開発途上国と認めて付与していた一般特恵関税制度(GSP)を廃止する。中国はすでに2014年にスイス、2019年に日本、今年10月12日にはユーラシア経済連合(EEU)のロシア、カザフスタン、ジョージアからGSPを中断されている。これに伴い、世界最大の開発途上国を自任してきた中国政府の貿易戦略に修正が避けられなくなった。

また、中国内の低賃金労働集約的輸出企業の海外移転も早まりそうだ。現在、中国製品は世界的に高い競争力を持っているため、一般特恵関税制度(GSP)を廃止する動きが中国企業の輸出に大きな影響を与えることはないだろう。

そういえば、今、世の中、普通の視線から見れば、中国はもはや「開発途上国」ではないだろう。ハイスピードで経済を発展させてきて、外交・軍事・宇宙開発の面では、強国・大国のような振る舞いを見せているようだ。しかし、中国国内の人たちに「中国は開発途上国ですか」と聞いてみたら、「国際的には先進国、国内は発展途上国」と言われた。

昔から学校の教育では、自国は「第三世界」に属すると教えられている。第三世界とは、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの発展途上国で構成されている。この「第三世界」には、概ね政治的な意味を持つようなもの。アメリカとソビエト連邦は「第一世界」であった。昔から、中国政府は自国国民に対し、「我が国はまだ弱い」「他国にいじめられてばかりだ」「中国は強くならなければいけない」と言い続ける傾向が顕著である。

中国にとっては、「開発途上国」から卒業したくない思惑があるようだ。言うまでもなく、現在、中国のマスコミは「中国はまだ発展途上国だ」という意見で一致している。

中国側の言い分としては、中国の一人当たりの所得水準は、世界銀行の「低所得」および「低中所得」の基準、すなわち一人当たりのGDPが4,045米ドル未満である「救済基準」を超えているとはいえ、米国の6分の1、EUの4分の1に過ぎず、世界平均の一人当たりのGDPは10,954米ドルに達したが、中国は10,839米ドルと、まだその「合格点」に達していない。

もう一つは、産業構造の割合で、先進国では第三次産業が全体の7割を超えるか、それに近い割合であるのに対し、中国は半分強に過ぎない。しかも、まだ貧しい地域や貧しい人々はいる。よってまだまだ発展途上国だという。

欧州連合(EU)、英国、カナダなど32カ国が、12月から中国を開発途上国と認めて付与していた一般特恵関税制度(GSP)を廃止することについて、中国マスコミの反応としては、「中国に対する関税優遇措置を撤廃することは世界銀行の方針に沿ったものだが、中国を牽制する意図が全くないとは言い切れない。いわゆる『人権』問題、中国への内政干渉、台湾に関する問題について、EUがこれまでに取ってきた行動を見てみると、アメリカに劣らず激しいものがある」。

アメリカのトランプ元大統領は、在任中かつて「世界最大の発展途上国」と評される中国に矛先を向けた。中国のGDPは世界第2位、商品の輸出額は世界第1位、世界のトップ500企業のうち120社が中国にあることを指摘し、「中国はもはや発展途上国とは言えない」と主張した。ただし、中国政府はこれに強く反論し、中国にはまだ農村地域の貧困があることを指摘し、発展途上国としての立場を維持することを表明した。

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