貴乃花光司「死ぬことの方がずっと楽だった」苦悩に満ちた言葉から得た未来

 

そして、そんな男が戦って、戦って、戦い切った後に、残っていたものが、他者に対しての恩返しだった。相撲で培ったことを通じて人材育成することが、残された人生の責務だった。そう言った貴乃花さんの目はとても穏やかで、これ以上ないほどやさしい男の目をしていた。

その上で、彼は取材後半、丁寧にやさしく語りかけるように、次のことを語ってくれた。

「生い立ちに感謝して、環境に感謝して、その上で社会に揉まれて、反骨心が芽生えて、それでも腐らず、自分の信じた道を言歩く」それが最も大切なことなのだ、と。

夢を実現する為の努力に必要なファクターは何だろう。人を見返してやりたい気持ち、人に対してマウンティングを取りたい気持ち、意地、根性、反骨心。それらだけが重要な要素になると信じていた。でも、親方は「人に対しての感謝の心こそが最大のモチベーションになる」と教えてくれた。

確かに、意地やプライドや執念だけでは瞬間風速になりかねない。一時的にパワーを発揮できても、そう長続きしないことは、経験上、みんなわかっている。それに、ある程度まで行けたら、すぐに納得しがちになるし、途中で挫折しても割と簡単に諦めがつきそうだ。

感謝の心であれば、自分の納得だけでは済まされない。簡単に諦めるわけにはいかない。誰かに対しての感謝があるからこそ、戦える。

自分の弱さや怠惰な心を棚に上げて戦える。親に対しての感謝でもいい。友人や社員、恋人や家族への感謝、社会や環境に対しての感謝だった構わない。感謝の心が弱い自分を挫折しそうな自分を支えてくれる。

それに比べれば、プライドや意地なんかは大した力にはなれない。その教えは、そう考えたこともない僕には、あまりに新鮮で、衝撃だった。

もう一度言う。 「生い立ちに感謝して、環境に感謝して、その上で社会に揉まれて、反骨心が芽生えて、それでも腐らず、自分の信じた道を言歩く」

結局、1,000の自己啓発本も、世の中のあらゆる成功法則も、この言葉にすべて集約されているんじゃないかとすら思う。

電子手帳を使わないアナログな僕の、手帳1ページ目に、そのまま書き写している。

取材後の帰り道、歩いていると、横を徐行する車の助手席のウインドウがスーッと下がった。ハニかんだ笑顔の貴乃花さんが手を振ってくれた。

誰より人生を戦い切ってきた男。そんな男の、笑顔の、破壊力。そっりゃモテるわと、つぶやいた。

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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